本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今週は、日本ユニシスの黒川茂 代表取締役社長と、富士通の加藤和彦 取締役執行役員専務の発言を紹介する。
「大日本印刷との協業は、あくまでも対等のパートナーという形で進めている」 (日本ユニシス 黒川茂 代表取締役社長)
日本ユニシスが11月2日、2013年3月期(2012年度)中間連結決算と中期経営計画の取り組みについて記者説明会を開いた。黒川氏の発言は、その会見の中で、2012年8月に日本ユニシスの株式の18.9%を取得して筆頭株主になった大日本印刷との協業関係を問われて答えたものである。
日本ユニシスの黒川茂 代表取締役社長
2012年度中間連結決算については、売上高が前年同期比6.4%増の1245億7100万円、営業利益が前年同期の2.13倍となる42億5700万円、経常利益も2.42倍となる43億7500万円と、増収および大幅な増益を記録した。ただし純利益については、有価証券の評価損により特別損失を計上したことで、25億3300万円の損失となった。
また、2012年度から始まった中期経営計画の取り組みについては、「システムインテグレーション(SI)や運用・保守サービスといったコアビジネスの拡大によって収益基盤の安定化を図るとともに、顧客との共創/BPOビジネスモデルの確立や社会基盤ビジネスへの進出によって成長を加速させていきたい」と説明した。
質疑応答では、大日本印刷との関係についての質問が相次いだ。同社の説明によると、連携強化およびシナジー効果の早期具現化を目的として、両社それぞれに推進組織を設置し、具体的な協業内容の検討を行っている最中で、現時点で100以上の案件が持ち上がっているという。
こうした動きに黒川氏は「大日本印刷が情報コミュニケーションをはじめとして幅広い分野で事業を展開していることから、今後さまざまな形での協業の可能性がありそうだと実感している」と手応えを感じている様子だ。
ただ、具体的な協業内容については、クラウド、新プラットフォームサービス、マーケティング・販売連携といった3つの事業で連携を強化していくとした8月9日の両社の業務提携発表時の説明とあまり変わっておらず、「具体的な内容が固まった段階で、あらためて大日本印刷と共同で発表したい」と述べるにとどめた。
とはいえ、筆頭株主となった大日本印刷とは主従関係がはっきりしているだけに、協業においても大日本印刷に引っ張られる形にならないか。そんなニュアンスの質問もあったが、それに対して黒川氏が答えたのが、冒頭の発言である。
そして、これも8月の発表時と表現はそれほど変わらないものの、「大日本印刷のマーケティングやコンテンツ制作能力と、日本ユニシスのインフラやアプリケーションの開発力を組み合わせれば、大きな相乗効果を生み出せると確信している」と語気を強めた。