スプリントは「お買い得品」か「安物買い」か
加入者数や業績といった数字に比べて、大手3社の時価総額はそれほど注目されていないようだ。ここで11月28日時点での評価額を見てみたい。ただし、ドイツテレコム傘下のT-モバイルUSAは、単体での価値を推測できるような数字を見つけられなかった。売上の比率については、Bloombergの記事に「ドイツテレコム全体の約25%がT-モバイルからのもの」という記述が見られる点を挙げておきたい。
さて、11月28日時点の時価総額は:
- AT&T(T):1909億6000万ドル
- ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ):1226億6000万ドル
- スプリント・ネクステル(S):169億2000万ドル
これだけみると「AT&Tはスプリントの10倍以上も評価されているのか!?」と驚いてしまう向きもあるかと思うが、各社は携帯通信のほかにも固定線や法人向けのサービスを手がけている。そこで、3社の携帯通信事業だけを見るために、Trefisという投資家向けサービスにあるグラフを使ってみよう。「同サービス利用者のコンセンサス」ということで厳密さの点ではどうかとも感じるが、大まかなイメージはこれでつかめるだろう。11月28日時点の3社のグラフは以下の通り。
3社ともすでに携帯通信関連がいちばん価値の高い事業になっている。ただし、その比率はベライゾンとAT&Tが6割強、それに対してスプリントが8割強である。
この2種類の数字をざっくり掛け合わせると、次のようになる。
- AT&T:1900億ドル×60%=約1140億ドル
- ベライゾン:1226億ドル×60%=約740億ドル
- スプリント:170億ドル×80%=約136億ドル
だいぶ数字を丸めてしまったが、WSJ(日本版)で「日本のドン・キホーテ」と評された孫正義が、ダン・ヘッセというサンチョ・パンサを引き連れて突撃していく「2つの風車」は、実はこれくらい大きい——そんな感じがこの数字の比較からつかめるだろう。