本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今週は、トレンドマイクロの大三川彰彦 取締役副社長と、米BeyondTrustのMarc Maiffret CTOの発言を紹介する。
「ICTのみならずICSに向けても、満を持して新たなソリューションを投入するときが来た」 (トレンドマイクロ 大三川彰彦 取締役副社長)
トレンドマイクロの大三川彰彦 取締役副社長
トレンドマイクロが11月19日、制御システム向けのセキュリティ事業に本格参入したことを発表した。大三川氏の冒頭の発言は、その発表会見で、これまでのICT(情報通信技術)分野向けに加えてICS(インダストリ・コントロール・システム)分野へもセキュリティ事業を広げていくことを打ち出したものである。
同社の説明によると、このところ、原子力発電所の遠心分離機の破壊を狙った「STUXNET(スタクスネット)」や、自動車組立工場の生産ラインを停止させた「WORM_ZOTOB(ゾトブ)」、鉄鋼プラントの蒸気タービン制御システムを停止させた「WORM_DOWNAD(ダウンアド)」など、制御システムのセキュリティインシデントの発生が相次いでいるという。
その背景には、制御システムのオープン化や外部ネットワークとの接続が広がっていることがある。このため、これまでクローズドに運用されていた制御システムが、外部からの標的となりつつあるわけだ。
こうしたニーズに対応して、同社が制御システム向けソリューションの第一弾として発表したのが、ホワイトリスト型セキュリティ対策ソフトウェア「Trend Micro Safe Lock(TMSL)」である。
TSMLは、制御システムの稼働を監視するHMI(Human Machine Interface)、スイッチ・ポンプ・バルブなどの装置をコントロールする機器のプログラムを更新するEWS(Engineering Work Station)、生産計画や工程管理といった生産管理を行う端末など、制御システム内にある特定用途の端末を対象にしたソリューションである。
TSMLのさらに詳しい内容については、すでに報道されているので関連記事 をご覧いただくとして、ここでは大三川氏が説明した制御システム向けセキュリティ事業の推進に向けた具体的な施策を紹介しておこう。
同氏によると、まずは制御システム向けの製品開発に今後も力を入れ、制御システム専門ベンダーへのOEM供給や共同製品開発、既存パートナーの制御システム部門との連携による販売推進を行う。また、パートナー向けにはセールス支援を、顧客向けにはプレミアムサポートで包括的な支援を行い、同社によるハイタッチセールスでの初期案件の創出を図る。さらに、政府・業界団体との連携も進めていく方針だ。