三国大洋のスクラップブック

ソフトバンクは「教科書通りの破壊」を決められるか - (page 3)

三国大洋 2012年11月30日 20時19分

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 ソフトバンクが過去に日本市場で固定線ブロードバンド(Yahoo! BB)や携帯電話(ソフトバンクモバイル)でやってきたことを考え合わせると、スプリントの上位2社に対する打ち手はある程度想像が付くだろう。

 ベライゾンもAT&Tも、LTEサービスについては「従来の3Gよりも高速。だから料金もその分高めで」という比較的シンプルな説明を打ち出しており、成熟した(=ノビシロの限られた)市場で売上を伸ばそうとしている。事業に対するアプローチも、限りある資源であり、取得に膨大なコストがかかる周波数帯をいかに効率的に活用するかという「希少性から生じる価値」に依存した比較的オーソドックスなもの。

 そうやって消費者やFCCに対して「これだけ持ち出し(ネットワーク整備に注ぎ込んだ投資額)をしているのだから、それなりのリターンを認めてもらわないと……」と、時にはっきりと、時にそれとなく言い続けてきた印象がある。一方で、通信効率が向上する分、同じ帯域幅を使ってさばけるデータ量が格段に増えるというLTEのもう一つの側面については、当然それほど表に出したがっていない。

 ここを突かれて、スプリントに「速くて安い」という打ち出し方をされれば、過去に種まきした果実が実って収穫期に入ったベライゾンにも、収穫までもう少し時間と投資が必要なAT&Tにも、なんとも厄介な存在となる可能性があるだろう。

 別な言い方をすると、チャレンジャーにとっては「教科書通りのdisrupt(破壊)」が仕掛けられる機が熟している、ということだ。

 むろん、日本の何十倍も広さがある米国で、それになりに使えるネットワークを築くだけでも相当なコストがかかるという点は無視できない。また、この部分をクリアできなければ、料金の安さを売り物とする下位事業者との明確な差別化も難しくなる。

 さらに、日本では2Gから3Gへの移行期と、それを追う形で続いたスマートフォンの普及時期に、ソフトバンクは「iPhone」という乗り物をうまく見つけられた。これと同様の新しい乗り物を、3Gから4Gに移り始めた米市場でうまく見つけられるかどうか、という点も気にかかるところである。

 もう一つのポイントとして、市場への新規参入者が後を絶たない点も、既存プレーヤーにとっては不確実性を高める変数といえるだろう。Skype創業者が後押しするフリーダム・ポップのような新手のMVNOの参入が今年に入って目立ってきている。また、直近ではFCCのゲネコウスキー委員長(かつてUSA BroadcastingやIACでバリー・ディラーの片腕として働いていたこともある人物)が、衛星テレビ放送大手で以前から携帯通信分野への参入を希望していたディッシュ・ネットワークの計画を原則的に支持する考えを明らかにしてもいる。

 話しが横道にそれるが、ディッシュ創業者で会長を務めるチャーリー・アーゲンという人物は、同社を立ち上げた1980年以前、ポーカーで稼ぐプロのギャンブラーとして知られた人物だそうだ。最近はユーザーの家庭に配る録画機能付きSTB端末に勝手にCMスキップ機能を追加したことで、番組を提供する大手テレビ局各社から猛烈な抗議の声が上がり、裁判沙汰にまで発展した。それでも「スキップするかどうかは消費者が選ぶこと」と一向にひるむ様子もない。

 話を戻すと、ワシントンにも大きな影響力をもつAT&Tやベライゾンのようなプレーヤーがいて、一方にディッシュ会長のような海千山千のギャンブラーがいるのが米国の携帯通信市場だ。さらに、モトローラを抱え込んだことである意味「呉越同舟を余儀なくされた」ベライゾンとグーグルの関係に代表されるように、通信キャリアと端末メーカーとの「非対称な争い」まで視野に入れると、現在の同市場を取り巻く環境が非常に興味深いのものであることが自ずと明らかになってくる。

 そうしたなかで、孫正義&ハッセのコンビがいったいどんな立ち回りをみせていくのか。その具体的な答えは来年以降、徐々に明らかになっていくのだろう。いまの時代にめずらしく、米市場、そして世界市場に華々しく飛び出した日本企業の健闘を期待したいと思っている。

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