パナソニックの津賀一宏社長
なにを勝ち組の条件とするのか
パナソニックの津賀一宏社長は「もし、シェアが勝ち組の条件だとするならば、パナソニックは勝ち組になろうとは思わない」と断言する。
これはパナソニックの大きな転換を意味する。
では、なにを勝ち組の条件とするのか——それはひとことでいえば「儲け」である。
パナソニックは、2015年度を最終年度とする中期経営計画を、2013年度から始める予定だ。この詳細は来年春にも公表されることになるだろうが、現時点で津賀社長が言及しているのは、「毎年度、フリーキャッシュフローを2000億円創出すること」「営業利益率5%以上を最低基準として、すべてのビジネスユニットを見直していくこと」の2点である。
そして「売り上げ成長を指標として追求することはない」と宣言した。
津賀社長はデジタルコンシューマ分野での取り組みを、自ら「負け組」と表現している。赤字のテレビ部門をはじめ、デジタルカメラや携帯電話の不振を指してこう発言した。この「負け組」という表現は、デジタルコンシューマ分野が儲かっていないからだ。
だが、その一方でこうも語る。
「収益を勝ち組の条件と捉えたときに、デジタルコンシューマで勝ち組になっている企業は、いないのではないか」
勝敗の物差しを変えようとする日本企業
スマートフォンやタブレットの領域ではアップルが勝ち組に入るだろう。そして、PCではレノボグループが勝ち組といえるかもしれない。しかし、テレビ市場でしのぎを削ったサムスンやLG電子は、圧倒的なシェアを持っていても決して勝ち組とはいえない。
今回の三菱重工と日立製作所の火力発電事業での合弁は、デジタルコンシューマ製品とは事業構造がまったく異なるが、収益性の高い領域において両社の強みを融合することでトータルソリューションの展開を推進。先行する海外の火力発電大手並みの利益水準に高めていこうという狙いがある。
両社長が、スマートコミュニティ分野への進出やIT基盤を活用した差別化などに言及しているのも、より収益性の高い事業へとシフトしたいと考えているからだろう。
こうしてみると、日本企業の勝敗を推し量る新たな物差しが、いま置かれようとしているのかもしれない。
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