Reutersでは12月初め、ルクセンブルグに登記した3つの会社を使ってハイパー節税策に邁進するアマゾンを扱った特集記事も掲載された。
この記事によると、米国の税務当局はアマゾンに対して15億ドルの課税を過去に遡って行おうとしている。その主な部分は、経費の付け替えなどの海外法人間の取引で節約した利益に関わるもののようだ。
以前の記事で、アップルのiTunesで楽曲を購入する日本のユーザーは、アップルのルクセンブルグ法人と取引していると記した覚えがある。それと同じように、アマゾンでは欧州の顧客がドイツや英国のサイトで買い物すると、同社が米デラウェア州に登記する法人と取引することになるという。
また、ルクセンブルグ法人のひとつであるAmazon Europe Holding Technologiesは、知財管理を専門とするペーパーカンパニーで、米国などの他の拠点で開発された技術の知財の権利を保有、この権利を他のグループ会社にライセンスして使用料を受けるというビジネスを行っているが、仕入れ代金にあたる米グループ会社(Amazon Technologies Inc、税率の低いネバダ州で登記)への支払い額は年間約3億ドル、それに対して欧州各国のグループ会社から受けとるライセンス料収入は年間5億8300万ドルにもなり、この差額がルクセンブルグにプールされる仕組みになっていると書かれている。知財からの利益は最大80%も免除されるというルクセンブルグの税法を利用し、同社では実効税率を6%以下に押さえ込み、実際にはその他の手法も組み合わせることでほぼ無税にしている可能性もあるとする専門家などの見方も紹介されている。
2013年も注目したい法人税をめぐる攻防
米国大手企業が積み上げる海外滞留金については、WSJが12月4日付の記事で改めて概況を伝えていた。この記事には主要各社の第3四半期末時点の手元資金と、その内のどれほどが米国内に置かれているかをまとめたリストがある。
それを見ると、アップルがおよそ3分の1(1212億5000万ドルのうち386億5000万ドル)、マイクロソフトが約8分の1(666億ドルのうち86億ドル)、そしてオラクルが約5分の1(316億ドルのうち64億ドル)などとなっていることがわかる。アップルについては、この386億5000万ドルのなかから株主配当金を支払ったり、米国内に作る予定のMacの工場の建設資金にあてるのだろう。
他の業種も含めた全般の状況については、今年JPモルガンチェースが実施した調査の結果が紹介されているが、調査対象となった1000社のうち、海外・米国内の資金の内訳(比率)を公表した約600社が海外に留め置いている資金額は合計で5880億ドルで、流動性合計の約6割にもなるという。また、海外であげた利益が米国持ち込み時に追加課税されることを嫌い、国外に寝かせたままにしておいて、わざわざ国内で融資を受けて配当金などの支払いにあてている一部企業の例も紹介されている。
さらにもう一点、オバマ政権が法人税率引き下げと抱き合わせで、米国企業が海外市場で得たすべての収入——incomeとあるが、おそらく利益と同じ意味だと思われる。売上ではない——を課税対象としたい考えを持っているという一節も目を惹く。
これからクリスマス休暇をはさんで年末年始、そして年明け以降に、この話題をめぐるニュースがいろいろと出てきそうな雲行きだ。米製造業の復活の流れなども含め、そうしたニュースについて今後も随時紹介していきたいと考えている。
(敬称略)
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