こうしたコンテナ型は普及しつつある。業界団体であるThe Green Gridは、コンテナ型には価値があると主張、IDC Japanの調査ではユーザーにその有用性が認められつつあるとしている。
「PUE=1」に近づけろ!
この数年でデータセンターを取り巻く環境の変化として、「電力使用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)」という指標が挙げられる。これは「データセンター全体の消費電力÷IT機器の消費電力」という計算式から出される指標であり、1に近ければ近いほど、エネルギー効率が高いことを示している。
データセンターで消費される電力は、サーバやストレージが消費しているようなイメージがあるかもしれないが、実際にはサーバなどから排出される熱を冷却するための冷却装置や空調設備などの方が多いのが実際だ。
PUEの値を1に近づけようというのは、データセンターを運営するSIerやインターネットデータセンター(iDC)、そして一般の企業にとって、ムダな電力消費を減らして、エネルギー効率を高めることになる。データセンターでのエネルギー効率は、2008年頃から課題視されるようになっているが、この傾向は、東日本大震災以降に電力供給が不安定になってしまったために、さらに重要視されるようになっている。
PUEを1に近づけようという動きは、サーバを冷却させるための冷却装置、サーバを設置するラック、空調設備などデータセンターの至る所で新技術となって表れている。かつてのAPCジャパン、現在のシュナイダーエレクトリックが提供するアセスメントサービスや大型ラック、冷媒ポンプ式冷却システム、局所冷却装置などである。NECの冷却モジュールもそうした動きを受けてのものと言える。
エネルギー効率を高めるための動きは、これ以外にもある。先に挙げたコンテナ型データセンターでPUEを低下させようという流れだ。IIJが島根県松江市に設置しているコンテナ型データセンターである。
コンテナ型ではないが、PUEを低下させようという動きもある。従来の建築物のデータセンターだが、外側の空気で内部を冷却しようというものである。iDC大手のさくらインターネットは北海道・石狩にデータセンターを建てて、外気冷房でPUEを低下させることを狙っている。
NTTコムウェアのデータセンターのPUEは1.02を達成、海外のデータセンターより高効率な仕組みを作っている。NECはデータセンターの内外の温度差を利用した自然換気で、空調に使われるエネルギーを6割削減できるという技術も開発している。外気で冷却する方式を採用するデータセンターは関電システムなどもある。また野村総合研究所(NRI)が完成させた東京第一データセンターはフロアを上下に分割することで、空調を効率的にさせている。
複雑化が止まらない
システムの集積地であるデータセンターだが、その運用管理は作業負荷とコストが高くなっているという実態がある。つまりは、人員が足りない、運用管理の自動化ができていないといった課題も浮き彫りになっている。IDC Japanの調査によると、その背景にはサーバの高密度化などによるハードウェアの増加、アプリケーションの多種多様化、ネットワークの肥大化などがあるからだ。
なぜデータセンターは複雑にならざるを得ないのか? 米Symantecの調査では、ビジネスクリティカルなアプリケーションが増えていることやサーバの仮想化などを挙げている。モバイル端末から業務システムにいつでもアクセスできるようになり、業務システムの稼働時間を以前より長くしていることも、複雑化の遠因になっていると推測できる。