求められるバックアップの効率化
バックアップの作業はどうしても手間がかかってしまう。ハイパーバイザで仮想化されたOSとアプリケーションをひとつの物理サーバに集約、統合した仮想化環境は、バックアップにかかる手間も複雑にならざるを得ない。またすべてのバックアップのデータをハードディスクに置くのもコストの面から効率的ではないし、新しいデータをテープに保存するのもまた時間がかかってしまう。
バックアップされたデータをどう管理すべきかも課題だ。システムが障害を起こした時に必要とされるデータがどこにあり、どのような手段でリストアすればいいのか。そうしたことからも、ストレージやバックアップにはまだまだ課題がある。これはIDC Japanの利用実態調査からも明らかになっている。
この数年、データをバックアップするための技術は進歩を遂げている。Oracleが進める“階層型ストレージ”もそうだが、ストレージ関連ベンダー各社が提供する“重複排除”がそうだ。
一見すると、ファイル名が異なるためにそこに含まれるデータは全く異なるように見えるが、実際には、ほんの一部分だけが異なっているだけであり、全体はほぼ同じデータ。重複排除は、その違いを把握して、より効率的にデータを記録するというものだ。ミロク情報サービスは、全国30拠点のバックアップ業務を集約、重複排除を活用することで65Tバイトのデータを11Tバイトに抑えることに成功している。
重複排除関連では、Symantecの中堅中小企業向けの「Backup Exec」や大企業向けの「NetBackup」、Hewlett-Packardの「Data Protector」や「StoreOnce Catalyst」、EMCの「Data Domain」などがあり、日立製作所のユニファイドストレージも重複排除機能を搭載している。
データは自らの資産
企業にとって欠かせない資源といえば“ヒト、モノ、カネ”とよくいわれるが、現在はこれに“データ”が加わる。ビジネスにシステムが欠かせなくなっている時代では至極まっとうな意見だろう。
システムに蓄積されるデータには、現在業務で必要とされる受注状況や注文されてから出荷されるまでの状況などが含まれる。それだけではない。企業が顧客とどのように付き合ってきたかを記した記憶、つまり企業の過去も記録されている。さらには、蓄積されたデータから、何をどのように開発し、どのように販売していけばいいのか、企業の未来につながる情報も眠っている。
大震災に続いてデータの重要性に改めて気付かされたのが、レンタルサーバ事業を展開するファーストサーバの障害だ。障害によってすべてのデータを消失したユーザー企業も存在する。
これまでのシステムは基本的にオンプレミスという選択肢しかなかった。だが、パブリッククラウドという選択肢もここに来て出てきている。パブリックとプライベートを組み合わせたハイブリッドクラウドも選べる。
コスト的な問題からパブリッククラウドを活用するにしても、企業が保有するデータは企業自ら守るほかないだろう。ファーストサーバの障害を踏まえてコメントを寄せてくれた、ガートナー ジャパンの鈴木雅喜氏(リサーチディレクター)が言うように「自らの資産である以上、自らの責任でデータを保護すべき」である。
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