データには企業の過去、現在、未来がある - (page 2)

田中好伸 (編集部)

2012-12-30 17:30

求められるバックアップの効率化

 バックアップの作業はどうしても手間がかかってしまう。ハイパーバイザで仮想化されたOSとアプリケーションをひとつの物理サーバに集約、統合した仮想化環境は、バックアップにかかる手間も複雑にならざるを得ない。またすべてのバックアップのデータをハードディスクに置くのもコストの面から効率的ではないし、新しいデータをテープに保存するのもまた時間がかかってしまう。

 バックアップされたデータをどう管理すべきかも課題だ。システムが障害を起こした時に必要とされるデータがどこにあり、どのような手段でリストアすればいいのか。そうしたことからも、ストレージやバックアップにはまだまだ課題がある。これはIDC Japanの利用実態調査からも明らかになっている。

 この数年、データをバックアップするための技術は進歩を遂げている。Oracleが進める“階層型ストレージ”もそうだが、ストレージ関連ベンダー各社が提供する“重複排除”がそうだ。

 一見すると、ファイル名が異なるためにそこに含まれるデータは全く異なるように見えるが、実際には、ほんの一部分だけが異なっているだけであり、全体はほぼ同じデータ。重複排除は、その違いを把握して、より効率的にデータを記録するというものだ。ミロク情報サービスは、全国30拠点のバックアップ業務を集約、重複排除を活用することで65Tバイトのデータを11Tバイトに抑えることに成功している。

 重複排除関連では、Symantecの中堅中小企業向けの「Backup Exec」や大企業向けの「NetBackup」、Hewlett-Packardの「Data Protector」や「StoreOnce Catalyst」、EMCの「Data Domain」などがあり、日立製作所のユニファイドストレージも重複排除機能を搭載している。

データは自らの資産

 企業にとって欠かせない資源といえば“ヒト、モノ、カネ”とよくいわれるが、現在はこれに“データ”が加わる。ビジネスにシステムが欠かせなくなっている時代では至極まっとうな意見だろう。

 システムに蓄積されるデータには、現在業務で必要とされる受注状況や注文されてから出荷されるまでの状況などが含まれる。それだけではない。企業が顧客とどのように付き合ってきたかを記した記憶、つまり企業の過去も記録されている。さらには、蓄積されたデータから、何をどのように開発し、どのように販売していけばいいのか、企業の未来につながる情報も眠っている。

 大震災に続いてデータの重要性に改めて気付かされたのが、レンタルサーバ事業を展開するファーストサーバの障害だ。障害によってすべてのデータを消失したユーザー企業も存在する。

 これまでのシステムは基本的にオンプレミスという選択肢しかなかった。だが、パブリッククラウドという選択肢もここに来て出てきている。パブリックとプライベートを組み合わせたハイブリッドクラウドも選べる。

 コスト的な問題からパブリッククラウドを活用するにしても、企業が保有するデータは企業自ら守るほかないだろう。ファーストサーバの障害を踏まえてコメントを寄せてくれた、ガートナー ジャパンの鈴木雅喜氏(リサーチディレクター)が言うように「自らの資産である以上、自らの責任でデータを保護すべき」である。

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]