目標の実現には、資金面や技術面など大きな課題の解決が必要。特に資金については、超薄利の商売をやっているフォックスコンにとってかなり重い負担になりそう、という予想もあるという。なお、フォックスコンの粗利率は労働者の賃金上昇にともなって2010年第2四半期から低下が続いてきたが、アップルなどの顧客に上昇分を転嫁できるようになった2012年第3四半期には3.4%まで回復(前年同期は2.2%)という記述もWSJの記事には見られる。
この記事のなかで目についたのは2つ。一つは、ロボットアームを導入した組立ラインで働く従業員のコメントで、それによると「以前は20〜30人いた従業員の数が、導入後は5人に減少。作業内容も変化し、マザーボードにコンポーネント類を差し込むといったものから、工作機械のボタンを押すという作業になったという。ちなみに、製品の仕上げに必要な磨き作業などは、まだロボットアームでは無理」というのが現状らしい。
もう一つは社会的な影響に関するものだ。非熟練労働者(もしくは低学歴労働者)の受け皿としてのフォックスコンに対する期待で、140万人もの従業員を抱えるフォックスコンで合理化が進んでしまうと、こうした雇用が失われるのではないかとの懸念があるようだ。WSJの記事には「自動化を進めるフォックスコンの動きは政治的に不人気」というアナリストのコメントや、同社の計画発表が各地方政府に対し人材確保について協力を求めるための圧力とする学者の見方なども記されている。
一方、アップルではティム・クックが12月上旬に、2013年から米国内でMacの組立をはじめるとの考えを明らかにしている。今週に入ってからは、第1弾となる機種について「Mac miniからではないか」という観測も浮上してきた。
この計画から生み出される仕事——その中味や雇用数は、当然まだ明らかではない(一部には「200人くらいの雇用創出」という推定もあるようだ)が、来年はこのアップルが生み出す雇用をめぐって、米中間の綱引きがいよいよ本格化するかも知れない。
「簡単に(製造工程を)海外に移せる時代は終わった」という関係者のコメントがNYTの記事には見られるが、そうした状況でより高付加価値の仕事内容にシフトする必要が高まるフォックスコン(をはじめとする中国の製造現場)、そして「Made In USA」の実現を視野にサプライチェーン全体の見直しまでを視野に入れ始めたかのようなアップルなどのブランド——。
米国外で積み上がる例の「多国籍企業の膨大な余剰利益」の動きなどとともに、来年は今年以上に気になる話題が増えそうな印象である。
(敬称略)
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