この記事でもう一つ目を惹いたのは、アーゲンに「無類の勝負好き」「ケンカ師」といった風なところがあり、ディッシュではひっきりなしに訴訟を続けている、という部分だ。
アーゲンが一時期、プロのギャンブラーを生業としていたことは以前も書いたが、コロラド大学で講演したときには「大企業のCEOの中で、自ら(法廷の)宣誓証言台に立つのは俺くらいなもの」と豪語していたという。
ディッシュの方はといえば、いまもまさに係争中——「放送受信用STBに、CMをスキップする仕組みを勝手に導入した」と、テレビ番組や映画供給会社といったコンテンツプロバイダーから訴えられて、侃々諤々やっているというニュースをよく目にする。また「訴訟がプロフィットセンターになっている企業というのは、ディッシュしかない」という前記の証券アナリストのコメントも考え合わせると、スプリントとクリアワイヤは「なんとも厄介な連中から横槍を入れられたものだな」といった感想を抱かないわけにはいかない。
本当の狙いが分からない買収提案
なお、ディッシュがクリアワイヤに出した買収提案については、本当の狙いとするところがまだよく分かっていない。
そう思える第一の理由は、スプリントがすでにクリアワイヤ株式の過半数を抑えていること。普通に考えれば、ディッシュがどんなに好条件を提示しても、スプリントがなかば手にしかけているクリアワイアの潤沢な周波数帯を手放そうとするはずがない。同時に、ディッシュは自社の携帯通信市場参入に関する具体的な計画をまだ発表していないため、クリアワイヤを買収できたとしても、その資産をどう活かしていくかという部分については見当が付きにくい。
周波数帯の関連で唯一手がかりになりそうな点をあえて挙げるとすると、それはFCCから原則的に転用を認められたディッシュの周波数帯(AWS帯の一部)が、スプリントが権利を保有する帯域と隣接しているということで、このために生じる電波干渉の懸念を無くすため、ディッシュは30MHzのうち10MHzを「バッファー」として空けておくようにとFCCから指示されている。転用を認める条件の一部として出されたこの指示は、スプリントの懸念表明を受けた措置とされている。つまり、ディッシュとしてはスプリントのせいでAWS帯の3分の1を使えなくなった、とも受け取れる。
ただし、そのことの意趣返しだけで、わざわざクリアワイヤ買収を仕掛けるのか——これもやはり凡人には首をかしげざるを得ない疑問の一つと思える。
参照した情報源(文中に明示した以外の記事)
- Dish Mulls Letting Advertisers Bid on Shows in Real Time
- Dish chairman says mobile plans to take time to coalesce
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