ただ、日本法人にとっては、グローバルベースを上回る好業績を達成しつつも、残された懸案事項がある。それは日本市場でのシェアがグローバルに追いついていないことだ。「日本とグローバルの市場シェアの差がまだ5ポイントほどある。高い成長率を継続してこの差をなくすようにがんばりたい」という河村氏の決意が、冒頭の発言の真意といえそうだ。
「アプライアンスではないソフトウェア単体のビッグデータ対応製品で、ユーザーニーズに柔軟に応えたい」 (日本HP 中川いち朗 常務執行役員)
日本HPの中川いち朗 常務執行役員
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は12月19日、米HPが昨年春に買収した米Verticaの事業をワールドワイドで統合したと発表した。HPソフトウェア事業を統括する中川氏の冒頭の発言は、その発表会見で、組織統合を機に投入したVerticaの最新製品の特徴を語ったものである。
Vertica事業の統合に伴い、日本HPではVertica事業本部を新設。これまで主にアプライアンスとして販売してきた「HP Vertica Analytics Platform」を、今後はソフトウェア単体で提供していくとしている。同社が今回投入した最新製品の内容については、既に報道されているので関連記事をご覧いただくとして、ここでは事業および製品の戦略に焦点を当てたい。
HPのソフトウェア製品は、開発、運用、セキュリティ、情報管理の4分野を軸に構成されており、Vertica製品はビッグデータ対応を中心とした情報管理向けのソフトウェアに位置付けられる。
中川氏はVerticaの最新製品をソフトウェア単体で提供することにした背景について、「アプライアンスはセットアップが容易で稼働までの時間が短いという長所があるものの、既存のインフラ資産を活用したい、ベンダーにロックインされない柔軟な環境で利用したい、といったニーズを満たすことができない」と指摘。ソフトウェア単体ならばそうしたニーズに加え、「小規模な構成からでもスタートでき、利用形態で依存することなく最適な環境を選択できる」とし、冒頭の発言に至った。
また、ビッグデータ対応については「構造化データと非構造化データを統合して活用することが求められるが、多くの企業においてはデータ全体の9割を占める非構造化データをうまく活用できていない」と指摘。そのうえで「Vertica製品と2011年に買収したAutonomyの技術を組み合わせれば、構造化データと非構造化データを統合し、分析するソリューションを提供することができる。これこそがHPならではのビッグデータ対応ソリューションだ」と強調した。
中川氏によると、HPのソフトウェア事業の規模は現在、世界第5位。インフラの最適化に注力する戦略で、IBM、Microsoft、Oracle、SAPといった上位の競合に挑む。HPの本格参入で世界のソフトウェア市場の勢力図がどう変わるか。大いに注目したい。