経営戦略から見たビッグデータの核心

企業経営から見たビッグデータの3つのV - (page 3)

辻 大志(バーチャレクス・コンサルティング)

2013-01-18 09:00

Velocity:企業活動に反映されるまでの全体としての迅速化

 Velocityは、データがリアルタイムに生成・蓄積され、迅速に処理されることを指す。ビッグデータという概念を説明する上でのVelocityは、リアルタイム性や迅速性が備わってこそビッグデータと言えることになる。だが、企業経営を考えるならば、Velocityこそ3つのVの中で最も重要な要素であることを強調したい。

 企業経営にとってスピードが重要であることは言うまでもない。大容量でかつ多様なデータから貴重な示唆が導かれ、意義のある戦略が描かれ、それが企業活動に反映されるとしても、一連のプロセスに時間がかかっていては企業が目指すべき結果には結び付かない。ビッグデータを企業経営にとって意味のある取り組みとして追求するならば、システムのみならず、業務やサービスを含む企業活動全体としてのVelocityを高めることを考えて進めなければならない、ということである。

 ビッグデータの取り組み事例として、企業システムのバッチシステム見直しやデータ統合などが挙げられているのを目にする。これは、まさにVelocity向上のための取り組みであり、おそらく多くの企業で必ず解決しなければならない事項であるが、全体の中の一部の話でしかない。

 データ管理の高度化とシステム処理の高速化がなされ、事業施策が速やかに策定されるようになったとしても、それを業務やサービスに速やかに反映できない限り、ビッグデータの取り組みは企業経営に寄与していないことになる。こうした点についても、次回以降の記事で触れ、具体的な方策を示していくこととする。

4つ目のVと、今後向き合うべき問い

 以上、3つのVについての概要とその見方を示したが、さらにもう1つのVとして、「Value(価値)」を挙げておきたい。ビッグデータに関わる取り組みは、ビジネス上の価値につながらなくてはならない。

 ビッグデータの活用場面は多岐に渡っており、今後さらに広がるだろう。しかし、すべての企業が同じようにビッグデータ活用による恩恵を受けられるわけではない。ビッグデータに係る取り組みをValueの高い取り組みとし、企業が求めるべきValueを着実に得ていくためには、単なるツールの導入や新たなサービス利用だけでなく、戦略的施策に基づいて、業務やサービスを一体的に再構成する必要がある。

 それをより具体的に議論するために、われわれは以下の問いに向き合わなければならないと考える。

  • 今後、企業が有するデータの価値をどのように捉え、どのように扱うべきか?
  • ビッグデータを活かすために、どのような業務モデル/サービスモデルを築くべきか?
  • ビッグデータから得られた示唆を、どのようにして迅速に業務やサービスへ反映させるのか?
  • ビッグデータ活用による売上/収益向上のシナリオはどのようなものか?

 次回以降、これらの問いを軸に、ビッグデータに関わる取り組みの核心部分に近づいていきたい。

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辻 大志(つじ たいし)
バーチャレクス・コンサルティング株式会社 経営戦略室室長
2012年6月より現職。事業展開・拡大に向けた施策やビジネスモデル構想、CRMやデジタルマーケティング等の領域を得意とする。以前はアクセンチュアで事業構想策定、CRM戦略策定、ビジネスプロセス改善、システム導入、アウトソーシング活用等といったプロジェクトに従事。その他、アジアでの新規事業構想策定、事業立ち上げ支援及び事業提携に係る調整等を推進した。バーチャレクス・コンサルティングの製品情報はこちら

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