コンテンツとしての価値から情報としての価値
3.データとして認識されていないが、今後データとして扱われるべきデータ――例えば画像、動画、音声などの非構造化データを指している。これらはデータではあるものの、従来の分類では「コンテンツ」や「ファイル」であり、データベース上で管理される構造化データとは明らかに扱いが異なっていた。
コンテンツやファイルとしての属性情報やメタ情報が構造的に管理されることはあるものの、画像、動画、音声などの非構造化データそのものが構造化データのように、検索や分析の対象になることはなかった。
しかし、これが、非構造化データに対する処理技術の高度化により、画像、動画、音声等自体が直接的な処理対象となり、コンテンツとしてだけではなく、情報として高い価値を帯びるようになってきた。例えば、店頭で取得された顧客の画像データから、年齢や性別等を自動識別し、マーケティングに活用するといったことは既に実用化されており、今後、さらなる高度化が進むことで、情報としての価値が高まることは容易に考えられる。このような点から、3も自社のデータ資産として再認識されなければならないデータ群であると考える。
さて、ここまでの1、2、3のデータは、基本的には自社のシステム環境を見渡すことで、自社のデータ資産として確認できるものである。
4.以降は、現状の自社のシステム環境から見つけ出せないデータ資産である。この点、「自社のデータ資産」という言葉との違和感を持つかもしれないが、データ資産にさらなるビジネス価値を求めるには現状の自社のシステム環境を超えて、自社のデータ資産を広くとらえるべきである。
プロセスの中に眠る価値あるデータ
そこで、4.現在取得していないが、自社の事業領域で取得可能と想定されるデータ――が挙げられる。このようなデータは、自社の業務、サービス、システムを思い起こせばいくらでも存在するわけだが、ビジネス価値に換えるという観点から、1つの事例に沿って考えていきたい。
図2は、女性下着メーカーのTriumphの事例である。この事例は、1)店舗でのタブレット端末の活用、2)ビッグデータ活用による新たな顧客行動理解の2点から語られている。すなわち、これまでは顧客が購入決定した商品の決済情報をPOSで取得できるのみであったが、タブレット端末であるiPadを使って顧客が購買に至るまでの行動履歴データをビッグデータとして収集・蓄積したことにより、顧客行動をより高度に分析できるようになったという説明である。

図2
ここで注目したいのは、顧客に対するサービスプロセスの中に価値あるデータの取得ポイントが自然な形で組み入れられている、ということである。ビッグデータを用いた分析となると、これまで取得していなかったさまざまなデータを大量に取得しようと考えてしまい、自社として考えるべきデータの範囲がぼやけ、議論が拡散してしまうケースが多々ある。
しかし、この事例から分かるとおり、現在の業務プロセスやサービスプロセスの中に、有効なデータを取得できるポイントはないか、現在の業務プロセスやサービスプロセスの中で、従業員の業務負荷や顧客の煩わしさ等が生じることなく、自然にデータを取得できないかなど、自社の事業運営の中で運用されているプロセスを検討の起点に据えることで、自社にとって、価値と意義のあるデータ資産が具体的に見えてくる。