エンタープライズ系ベンチャーの共通点とは、
- モバイル+クラウド(+ソーシャル)の流れに乗ったサービスを提供
- コンシューマー系サービスの影響を強く受けている(使い勝手重視のUIデザインなど)
- フリーミアム(Freemium)形式でマーケティング、マネタイズするところも少なくない
このTechCrunchの記事に付随する形で後日公開されたマーク・アンドリーセンのとても長いインタビュー記事には、コンピュータシステムの歴史的変遷を踏まえた興味深い指摘がある。
曰く、
「最初期にとても高価だったコンピュータシステムを買えたのは、それこそ米国防省しかなかった。ところが5年も経つとシステムの値段が半値くらいまで下がり、一握りの大手保険会社が導入するようになった」(「IBMの故トーマス・ワトソンCEOが『コンピュータの需要など世界に5台程度しかない』といったというのは、その時点では正しかった」というアンドリーセンの指摘もある。ただし、ワトソンが言ったとされる「世界で5台しか売れない」という発言は誤った引用だとする説もある。とはいえ、誰がこうした発言をしていたとしても、この状況認識は妥当だったといえよう)
「1950年代にメインフレーム(IBM製)が登場すると、コンピュータシステムの価格がさらに下がり、製造業や金融機関など一般の大企業でも導入が進んだ。さらに、DECのミニコンが市場に投入されると、中堅企業でもコンピュータを導入するところが出てきた」
「さらに時代が下り、PCが登場すると、コンピュータは個人でも手の届くものとなり、やがて企業でも『一人に一台』という状況になった。ただし、プラットフォームの規模でいえばせいぜい数億台どまりだった」
「21世紀に入ると、それまで半世紀にわたって続いてきたトップダウン(原典の表記はtrickle-down)の流れが逆転し、ボトムアップ(grassroots)式で新技術の導入・普及が進むようになった」
「モバイル端末(スマートフォンやタブレット)の急激な浸透やクラウドコンピューティングの定着で、最初から10億台のスケールを想定できるプラットフォームが出現した」
「いまでは興味深い最新技術——競争力につながる要素は、まず消費者から導入がはじまり、次に小さな企業、中堅から大企業、政府機関という順番で進んでいく」
などといった指摘がある。さすがにマーク・アンドリーセン、といったところだ。
一方、WIREDに掲載された「With $1 Trillion at Stake, Enterprise Technology Gets Its Star Turn」と題する記事にも、
「これまでエンタープライズ市場では10〜15年周期で大きな変化が起こり、そのたびに主要なプレーヤーが交代してきている」
「前回の時(1990年代)には、ピープルソフト、ビジネスオブジェクツ、SAP、オラクル、サイベース、マイクロソフトなどが台頭し、それまでの既存プレーヤーから主役の座を奪った」
「当時と同様の変化がいま起こりつつあり、アプリオ(Appirio)、ボックス、グッドデータ、ネットスイート(NetSuite)、パロ・アルト・ネットワークス(Palo Alto Networks)、オクタ、サービスナウ(Service Now)、スプランク(Splunk)、ワークデイ(Workday)などの新興勢力が、EMC、SAP、オラクル、マイクロソフト、HP、IBMなどからパイ(売上)を奪おうと虎視眈々……」
といった記述がある。
いわゆる「BYOD」の流れで職場進出が進んだモバイル端末、そしてそのハードウェアプラットフォームを前提としたソフトウェア(アプリ)サービスの普及、というのは実にわかりやすい流れである。