三国大洋のスクラップブック

シリコンバレー発、ポストPC時代のエンタープライズ系ベンチャー企業群 - (page 2)

三国大洋

2013-02-08 13:34


 エンタープライズ系ベンチャーの共通点とは、

  1. モバイル+クラウド(+ソーシャル)の流れに乗ったサービスを提供
  2. コンシューマー系サービスの影響を強く受けている(使い勝手重視のUIデザインなど)
  3. フリーミアム(Freemium)形式でマーケティング、マネタイズするところも少なくない

 このTechCrunchの記事に付随する形で後日公開されたマーク・アンドリーセンのとても長いインタビュー記事には、コンピュータシステムの歴史的変遷を踏まえた興味深い指摘がある。

 曰く、

 「最初期にとても高価だったコンピュータシステムを買えたのは、それこそ米国防省しかなかった。ところが5年も経つとシステムの値段が半値くらいまで下がり、一握りの大手保険会社が導入するようになった」(「IBMの故トーマス・ワトソンCEOが『コンピュータの需要など世界に5台程度しかない』といったというのは、その時点では正しかった」というアンドリーセンの指摘もある。ただし、ワトソンが言ったとされる「世界で5台しか売れない」という発言は誤った引用だとする説もある。とはいえ、誰がこうした発言をしていたとしても、この状況認識は妥当だったといえよう)

 「1950年代にメインフレーム(IBM製)が登場すると、コンピュータシステムの価格がさらに下がり、製造業や金融機関など一般の大企業でも導入が進んだ。さらに、DECのミニコンが市場に投入されると、中堅企業でもコンピュータを導入するところが出てきた」

 「さらに時代が下り、PCが登場すると、コンピュータは個人でも手の届くものとなり、やがて企業でも『一人に一台』という状況になった。ただし、プラットフォームの規模でいえばせいぜい数億台どまりだった」

 「21世紀に入ると、それまで半世紀にわたって続いてきたトップダウン(原典の表記はtrickle-down)の流れが逆転し、ボトムアップ(grassroots)式で新技術の導入・普及が進むようになった」

 「モバイル端末(スマートフォンやタブレット)の急激な浸透やクラウドコンピューティングの定着で、最初から10億台のスケールを想定できるプラットフォームが出現した」

 「いまでは興味深い最新技術——競争力につながる要素は、まず消費者から導入がはじまり、次に小さな企業、中堅から大企業、政府機関という順番で進んでいく」

 などといった指摘がある。さすがにマーク・アンドリーセン、といったところだ。

 一方、WIREDに掲載された「With $1 Trillion at Stake, Enterprise Technology Gets Its Star Turn」と題する記事にも、

 「これまでエンタープライズ市場では10〜15年周期で大きな変化が起こり、そのたびに主要なプレーヤーが交代してきている」

 「前回の時(1990年代)には、ピープルソフト、ビジネスオブジェクツ、SAP、オラクル、サイベース、マイクロソフトなどが台頭し、それまでの既存プレーヤーから主役の座を奪った」

「当時と同様の変化がいま起こりつつあり、アプリオ(Appirio)、ボックス、グッドデータ、ネットスイート(NetSuite)、パロ・アルト・ネットワークス(Palo Alto Networks)、オクタ、サービスナウ(Service Now)、スプランク(Splunk)、ワークデイ(Workday)などの新興勢力が、EMC、SAP、オラクル、マイクロソフト、HP、IBMなどからパイ(売上)を奪おうと虎視眈々……」

 といった記述がある。

 いわゆる「BYOD」の流れで職場進出が進んだモバイル端末、そしてそのハードウェアプラットフォームを前提としたソフトウェア(アプリ)サービスの普及、というのは実にわかりやすい流れである。

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