アンドリーセンのインタビューには、同氏がギットハブへ投資した際に経験したという面白いエピソードも出ている。アンドリーセンがベン・ホロウィッツとともに舵取りするベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(AH)は昨年、コードレポジトリサービスを提供するギットハブの説得に成功、それまで外部からの資金調達無しで成長してきた同社に単独で1億ドルというあまり例のない規模の投資をした。
この際、AHではデューディリジェンス(資産調査)の一環として、潜在顧客からギットハブに届いた問い合わせメールのすべてに目を通せるようにしてもらった。
いざ蓋を開けてみると、驚いたことに、名の知られた大企業のCIOや購買担当者が、自分たちのほうから「ライセンスを買いたい」といってくる。「社内でGitHubをつかっている従業員がもう600人くらいいるので、エンタープライズライセンスを契約したいと思うんだが、だれに聞いたらいいのか、どこに支払いの小切手を送ったらいいのかなどを教えてくれないか」などと電子メールで問い合わせてくるというのである。ギットハブにはセールス担当者もおらず、またライセンスの価格体系も決まっていなかったので、AHでは出資後急いでそのあたりを整備したそうだ。
このギットハブにしても、あるいはボックスにしても、AHの投資先だから、アンドリーセンが披露したエピソードもある種のポジショントークと受け取れなくもない。けれども、AHが実際に1億ドルもの掛け金を張ったという事実もあるから、まったくの嘘っぱちというわけでもあるまい。
また、アンドリーセンは「AHの投資先のなかには、いまでもハードウェアを買うようなところはひとつもない。例外は社員が使うラップトップくらいのものだが、それにしたってBYODでいずれはなくなるだろう。若い連中は、アマゾンのAWSやSalesforceと契約するだけで、サーバもストレージ機器も、あるいはCRMソフトももう買ったりはしない」などともコメントしている。
エンドユーザーはますますモノを買わなくなるが…
さて。
デルのLBOについて報じたWSJやBloombergの記事などを読むと、四半期ごとに結果を出すことを求めてくるウォールストリートの干渉に煩わされずにすむようになったマイケル・デルは、思い切った方向転換を図ると考えられているようだ。
具体的には、利幅の小さなコンシューマー向けPC事業などからは撤退し、より大きな利幅の期待できるソリューションやサービスの提供に事業の軸足を移す考えだという。
実際、2〜3年前からそうした方向転換につながる企業や技術の買収を進めてきており、しかもIBMやHPといった先行する競合相手が攻めあぐねている中小企業の市場をねらう、などと書いたものもみられる。
アンドリーセンは前述のインタビューのなかで、「確かなこととして言えるのは、今後エンドユーザー(顧客企業)はますますモノを買わなくなるだろう。システムやハードウェアを扱う会社、サーバやネットワーク機器の会社にとって、これは悪いニュースだ。ただし、そういうモノをクラウド関連の企業は山のように買うだろうから、需要が無くなることは決してない」などとも述べている。
こうしたさまざまな要素を考え合わせたとき、少なくともいまのところは「ポストPC」への流れで大きく遅れをとった感のあるデル、これから新たな方向へ活路を求めようとするデルが、いったいどんな手を打ってくるのか。
「資金の続くかぎり新興勢を買いまくる」というわかりやすいものも含め、同社の今後の戦略が気になるところである。
(文中敬称略)
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。