SAS Institute Japanは2月19日、ビジュアルデータ探索ソフトウェアの最新版を同日から提供すると発表した。インメモリ技術を利用し、国内のサーバメーカーとも連携することで、大企業だけでなく中堅規模の企業も大規模データを高度に分析できる環境を提供する。吉田仁志社長は2013年度における事業戦略にも触れ、パートナーとの連携強化、データサイエンティスト育成、分析コンサルティングの拡充などを表明した。
製品名は「SAS Visual Analytics」。「過去を分析するBIに加え、未来を予測するBA(ビジネスアナリシス)を組み合わせたのが特徴」と吉田氏は話す。具体的には、未来の数値を予測するために時系列予測や重回帰分析機能を追加。視覚性と処理の高速性が特徴としている。
2013年のテーマは「アナリティクスを日本企業の原動力にすること」と話したSAS Institute Japanの吉田仁志社長
また、対象ユーザーをさまざまな規模の組織に広げた。ハイエンド利用企業向けからエントリ導入に対応するため、例えば、富士通は自社の各ブレードサーバ製品をVisual Analyticsの動作確認済み製品として提供し「SAS サポートセンター」を開設している。日本ヒューレット・パッカードも、パートナー企業としてVisual Analyticsの動作検証済みハードウェアを提供。NECはSASのノウハウを補完するデータ分析サービスなどを提供することも表明した。
吉田社長は、インメモリ技術を活用した大量データの高速処理を可能にするこうした分析ソフトウェアを、特に「カスタマーインテリジェンス、アンチマネーロンダリング、不正検知などの分野に提供していきたい」と話す。
大量データを読み解く「データサイエンティスト」を増やす必要があるとし、バックグラウンドの経験として、データから過去ではなく未来を見るための統計学や数学の知識が不可欠と指摘。データサイエンティスト育成のため、大学向けパッケージを19万8000円で発売することも明らかにした。
Visual Analyticsのユーザーインタフェース
Visual Analyticsを導入した企業の1つに、フィリピンの流通小売企業、SM Marketing Convergenceがある。同社は、ロイヤルティプログラムの開発と運用を手掛けており、課題は8億件以上に上る店舗トランザクションデータから、ビジネスに効果的な情報を取り出すためのソフトウェアを導入することだった。従来型のシステムでは、基本的な情報を伝えるレポートしか得られなかったため、Visual Analyticsの導入を決めたという。
Dellのブレードサーバ上でインメモリアーキテクチャを利用することで、膨大なデータのかたまりを細分化することなく、そのまま分析できるようになった。導入により、タイムリーで的を射た情報を把握し、プロモーションを仕掛けることが可能になった。
結果として、新規顧客の獲得数を増やし、1000万人に上る会員の離反防止、クロスセルおよびアップセルが効果的に実現したとしている。