運用効率を向上させる
社内の意思決定者と従業員がクラウドへの移行に前向きになったのであれば、数多くの外部プロバイダーから製品を選択し、自社に合わせたインテグレーションを施すことで効率を向上させ、異なった製品間でのデータのやり取りを可能にするような完璧なシステムを構築するのもIT部門の役割となる。以前であれば、社内システム間は何のつながりもないかたちで運用されていたり、インテグレーションが極めて高価であったりしたものの、今日のような互いに連携し合うクラウドアプリケーション(カスタマイズを行わなくても連携できるものもある)の採用により、インテグレーションを行ったり、インフラ全体を通じたシームレスなデータの流れを生み出したりする作業が、ITプロフェッショナルの持つ真の実力の見せ所となるわけだ。
IT部門がサプライチェーンモデルに移行するようになると、それまで社内で管理されていた業務データの移管先となる、サードパーティーのプロバイダーとの関係構築も極めて重要になってくる。クラウドコンピューティングの出現によって、レガシーな、あるいは企業向けのソリューションと競えるようなサードパーティー製の数多くのソリューションが、しばしば安価に利用できるようになってきている。また、ソリューションの多様化により、コスト面から見ると望ましい状況が出てきたものの、市場における選択肢があふれようになっているため(以前は非常に限られた選択肢しかなかった)、自社に最適なソリューションを見つけ出すための適切な調査と評価も欠かせない作業となっている。
ITプロフェッショナルは、システムを実際に構築したり、その保守に力を注ぐのではなく、自らの開発スキルを磨くとともに、異質なアプリケーションが効率よく通信しあい、互いに協調しあえるように、APIの取り扱いや、連携、インテグレーションを行ううえでの専門知識を獲得する必要がある。最新のAPIリリースに対応し続け、新しいインテグレーションを考え出せれば、新たなIT部門の存在価値を証明できるはずだ。
社内のプラクティスを見直し、責任を委譲する
ここまでで、クラウドへの移行は完了し、ITインフラにおけるさまざまな側面をうまくインテグレーションできたと言える。IT部門の次の仕事は、今後登場してくるトレンドを見極め、最新のクラウドアプリケーションに後れを取らないようにすることだ。「Google Docs」や軽量のCRM、電子メール関連の生産性向上アプリケーションといった特定用途のソリューションは、既に会社のアーリーアダプターらによって利用されているはずだ。こういったソリューションは、個々のユーザーにメリットをもたらすだけでなく、会社全体のコスト削減と生産性の向上といういずれの面でも、著しい効率改善を達成できる。ユーザーの日々の仕事を支援できるようなソリューションを提示することで、信頼関係を築き上げ、さらなる変革を了承してもらいやすくもなるはずだ。
またIT部門は、クラウドでの運用を続けるなかで増えた数多くのクラウドアプリケーションへのアクセスに対する管理とプロビジョニングにも直面する。こういったアプリケーションに円滑にアクセスできるような企業独自のクラウドソリューションを実装すれば、長期的にはIT部門とエンドユーザーの双方の時間を節約できるようになる。さらに、特定の責任を各部門長に委譲すれば、IT部門の負荷も軽減できる。例を挙げると、マーケティングを自動化するシステムはマーケティング部門の責任者に譲り渡し、任せてしまうわけである。同様に、CRMは営業部門の責任者に任せればよいだろう。適切な統制が残されている限り、適度な責任委譲はメリットとなる。