SAPはERP事業において、かねてからパートナービジネスを通じて中堅・中小企業向け市場への展開を図ってきたが、競合がひしめく激戦区ということもあって、大手企業向け市場における圧倒的な存在感を放つまでには至っていないという背景がある。
そこで今回はERP以外の事業を前面に押し出し、ERPで攻め切れなかった中堅・中小企業向け市場の裾野へ入り込もうという思惑が見て取れる。同社ならではのしたたかな戦略といえそうだ。
「個別サイロ型インフラになっている多くの企業システムを、クラウド最適型インフラに変えていきたい」 (日本IBM 三瓶雅夫 常務執行役員)
日本IBM 三瓶雅夫 常務執行役員
日本IBMが2月6日、2013年のハードウェア事業戦略とUNIXサーバの新製品を発表した。システム製品事業を担当する三瓶氏の冒頭の発言は、その発表会見で、ハードウェア事業戦略のベースとなるIBMのITインフラに関するビジョン「スマーター・コンピューティング」の基本的な考え方について語ったものである。
発表会見で説明された事業戦略や新製品の詳しい内容については、既に報道されているので関連記事をご覧いただくとして、ここではスマーター・コンピューティングの基本的な考え方に注目したい。
三瓶氏によると、企業の多くは1990年代初頭に始まった情報システムのダウンサイジングの動きに伴って、業務ごとに分かれた形の「個別サイロ型インフラ」を構築してきたという。しかし、個別サイロ型インフラには、組み合わせが複雑になり、保守運用コストも増大するデメリットがあった。さらにシステム環境が硬直化し、ガバナンスも脆弱になってしまうといった課題がある。
そこで、こうした課題を解消するためにIBMが提案しているのが「クラウド最適型インフラ」という仕組みである。8000社に及ぶ顧客システムを分析して考え出したというこの仕組みのキーワードは「ワークロード」。いわば業務の機能要素といったところか。分析の結果、IBMはシステムのワークロードが「トランザクションデータベース」「アナリティック」「ビジネスアプリケーション」「Webコラボレーション」の4つから成り立っていることを突き止めた。
ワークロードを4つに分類できるのであれば、それらをそれぞれプール化して最適化すれば、ユーザーはそれぞれ必要なリソースを使いたいときだけ利用できるようになる。しかもクラウドなので、保守運用コストを最小化でき、ガバナンスやセキュリティも確保できる。これが、IBMが提案するクラウドの新たな利用形態である。
三瓶氏の説明によると、この仕組みは統合アーキテクチャのもとで構築されるという。果たしてどのようなアーキテクチャか、注目しておきたい。
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。