アップルが2011年8月に米国特許商標庁に提出した書類は、iWatchの開発を示唆しているが、いわゆる「腕時計」ではないようにも見える(credit: US Patent Office)
NYTもWSJもBloombergも、競うようにiWatchの情報を書き立てている。
NYTが「(新)技術開発担当幹部のボブ・マンスフィールドが、ナイキのFuelBandやJawboneのUpのような手首に巻く端末に高い関心を示している」「iPhone向けの『ゴリラグラス』を製造する米コーニングが昨年、『Willow Glass』という湾曲可能な製品を開発していた」などと伝えれば、WSJは「フォクスコンではとくに画面の省電力化に取り組んでいる」と書き、Bloombergも「アップル社内に100人規模の開発チーム」などと書いているから、これまでの新製品登場のパターンを考えると、高い確率で開発が進んでいるものと思われる。
今後は「開発の有無」よりも「はたしていつ頃出るか」が焦点になるところまで進んでいるといっていいかもしれない。なお、iWatchについても「iPhoneとAndroid端末の両方に対応」という噂もあるから、そうなるとまさにユーザーインターフェース(UI)という「上手(まわし)の取り合い」である。
再び訪れる「自己破壊」の衝動
アップルがiPhoneという小型のコンピューターを携帯電話機の世界に持ち込んむことで、結果的にパソコン市場を破壊(disrupt)した、という話は以前も書いた通り。
その例を踏まえると、今度はウェアラブル端末がスマートフォンの市場をひっくり返すことになるのかもしれない。メアリー・ミーカーの予告通り、2012年にモバイル端末の数がPCのそれを上回ったと思ったら、もう戦いの主戦場が次の場所に移ろうとしているのは、テクノロジー関連分野のダイナミズム、あるいは怖さを物語るものと思える。
この分野ですでに大きなシェア(台数、もしくは利益)を握っているアップルやグーグル、それにサムスンなどにとって、それが「自己破壊」になるのか、それとももっと穏やかな「堀の拡張」に留まるのか、現時点でまだわからない。もっとも、バッテリーの制約などから、実現までにはしばらく時間がかかりそうだ。
ただし、「ユーザーとの接点を制する」ことが勝敗の分かれ目——大きな利益の獲得につながることはほぼ間違いのないところ。
さらに、グーグルがGoogle Glassのデモビデオに盛り込んでいるようなビジョンを実現し、そしてそれが一般にまで普及すれば、当然コンピュータをめぐるパラダイムがまた大きく変わることになる。
The Vergeのトポルスキーは記事のなかで、Google Glassのカメラ機能がもたらすプライバシーへの懸念などについて何度か触れているが、そうした負の側面についての社会側の適応も早晩求められることになろう。
企業のIT部門担当者諸氏は、BYODの流れに乗って、Google Glassのようなデバイスが職場に持ち込まれる日のことを今から想定しておいた方がいいだろう。
(文中敬称略、トップ画像はGoogleのフェローでバイスプレジデントのSebastian Thrun氏がGoogle+に投稿した写真から。Google Glassを着用して息子のJasper君と遊んでいる様子)
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