経営戦略から見たビッグデータの核心

企業がビッグデータ運営モデルを検討すべき理由 - (page 2)

辻 大志(バーチャレクス・コンサルティング) 2013年03月05日 10時00分

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データの取得・収集――データが誕生する場面をつくる

 データを取得・収集するというプロセスを細分化すると、まず、データが誕生する場面が存在する。データはハードディスクの中で湧いて生まれるわけではなく、誰かが、あるいは何かが何らかの事象をデジタル変換しない限り、データが誕生することはない。データが誕生しない限り、取得・収集することもできない。

 かつてはもっぱら、人間がコンピュータに備え付けられたキーボードの入力装置を用いてデータを生成していた。だが今は、そのような場面に限定されていない。身の周りには多くの情報端末があり、そこからさまざまな方法でデータを入力できる。われわれの身の回りにあるさまざまな機器や設備は、人間の動きや環境の変化を察知し、そのデータに合わせて適切に動作するように制御されている。

 その他にも、さまざまな場面でデータが大量に誕生するようになっているが、これまではデータ容量の問題や処理パフォーマンスの制約から、そのように誕生したデータのうち一部のみが取得・収集の対象となっていた。今後は、データ容量の問題や処理パフォーマンスの問題を気にせずに、データを捨てることなく、取得・収集し蓄積できるようになる。ここまでの話は、「取得・収集」というプロセスを運営モデルとして描くまでもない話である。単に誕生したデータを捨てずに取って置くというだけである。

 ビッグデータを背景に「取得・収集」というプロセスを運営モデルとして描く際の特に重要な観点は、データが誕生する場面をどのようにコーディネートするかである。特に取り上げたいのは、以下のように、一般消費者や一般ユーザーを巻き込んで、データが誕生する場面を作り出すモデルである。

図2:データが誕生する場面の創出:一般消費者や一般ユーザを巻き込む事例
図2:データが誕生する場面の創出:一般消費者や一般ユーザを巻き込む事例

 これはウェザーニューズの例である。利用している読者もいるかもしれない。「取得・収集」のモデルを考える上で、一つの興味深い事例である。ウェザーニューズでは、全国に数十万人にいるという「ウェザーリポーター」が自身のスマートフォンなどを使って、各地からリアルタイムに気象情報を提供する仕組みを確立している。

 気象情報サービスのためにデータを取得・収集する方法としては、全国に気象台やセンサを置き、そこから情報を集める方法も当然あるが、それとは異なり一般ユーザーを巻き込み、一般ユーザーを自社のサービスを支える情報提供者としているのである。

 一般ユーザーはなぜ、ウェザーニューズに協力しているのか。実は、特に協力しているという意識はなく、ただ「便利だから」「楽しいから」という理由で参加している。そういったインセンティブを仕組みとして備えることによって、全国にいる一般ユーザーが各地でデータを誕生させ、それらの安価で新鮮な大量のデータをウェザーニューズが「取得・収集」しているのである。

 一般消費者や一般ユーザーを巻き込む例としては、Amazonの電子書籍端末Kindleにあるアンダーライン機能も挙げられる。Kindleのユーザーは、本を読みながら重要な個所や気になる個所に線を引く。Amazonではこれをデータとして取得・収集し、分析することで、新たなサービス提供やプロモーションに活用する。つまり、線が引かれるたびにデータが誕生し、それをAmazonが「取得・収集」するのである。

 本の中の文章に線を引くという行為は読者が自分のためにしているのであって、特にAmazonにデータ提供をするためにしているわけではない。しかしながら、結果としては、貴重な情報の取得・収集における重要なデータ提供者となっているのである。それは、Amazonが、線を引くという機能をKindleに搭載したことによって、データが誕生する場面を作り出しており、それこそが「取得・収集」のモデルとなっているのである。

 ビッグデータを背景に、「取得・収集」の運営モデルを描くにあたって、データが誕生する場面をどのようにコーディネートするかが重要であるという事情がある。

 本稿では、特に一般消費者や一般ユーザーを巻き込む例を取り上げたが、取引データにせよ、センサデータにせよ、ログデータにせよ、誰あるいは何がデータを誕生させるべきか、その誕生のためにはどのような仕組みが必要かを考察の起点とすることで、効率的・合理的な「取得・収集」の運営モデルを描くことができる。

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