経営戦略から見たビッグデータの核心

企業がビッグデータ運営モデルを検討すべき理由 - (page 3)

辻 大志(バーチャレクス・コンサルティング)

2013-03-05 10:00

データの分析・活用--分析結果の速やかな反映のための仕組みの設計

 データの分析・活用と聞くと、PDCAのような改善サイクルを思い浮かべる方も少なくないだろう。この点については今後も変わらない。分析から得られた示唆を業務やサービスに反映し、その結果をまた分析する。こうした話は従来もよくあったが、ビッグデータにかかわる取り組みにおいては、特に留意すべき点がある。それは初回の記事にも触れた「Velocity(速度・頻度)」である。

 データ分析についてのこれまでの多くの取り組みを見てみると、例えば、業務基幹系のデータベースからETLツールを使って分析用データに加工し、DWHに転送するという処理を十数時間もかけて行う――しかもそれが週次や月次のバッチ処理として行われる。

 スピード感としては、このような取り組みがほとんどであった。このようなスピード感では、現場の業務担当者から「おもちゃ」と揶揄(やゆ)されるのもしかたがない。データ容量の制約で、限られたデータでの分析であるため正確性に疑問がある。その上で、1週間も1カ月も前の状況しか把握できないのでは意味がない。例えば、賞味期限の短い食料品の生産管理や在庫管理には、とても活用できる代物ではなかったのである。

 今後のデータ分析では、大容量でかつ多様なデータを極めて短い時間で処理することが技術的に可能だ。これまで処理速度の問題でデータ分析システムを利用してこなかった業務分野でも活用され得る。

 そこで、次に問題になるのは、その処理速度に業務やサービスが対応できるのかという点である。

 データ分析の処理が速やかに行われ、分析結果が直ちに手元に届いたとしても、その結果に基づく対応が速やかでなければ、意味がない。これを意味のある形にするためには、データ分析の結果を業務やサービスに速やかに反映することが必要である。データの「分析・利用」の運営モデルとして考えなければならないことはまさにこの点である。

 例えば、ある生産現場で精度の高い需要予測が短サイクルで得られるようになったとしよう。そうすると、これに基づく精度の高い作業計画が短サイクルで作られるようになり、それに合わせて、作業員のシフト表が短サイクルで作成できるようになる。

 しかし、実際に、そのシフト表どおりに合理的・効率的に作業員を配置させるためには、人事や労務を含むさまざまな工夫を組み入れた運営モデルが必要になる。

 ビッグデータの取り組みや新たなデータ分析の取り組みを進める際には、データの分析・利用が特に期待されている領域において、分析結果が速やかに反映されるための運営モデルを描き、それを実行するための具体的なルールや仕組みを設計しておくべきである。

 それによって、取り組みの成果が早期に確認できるだけでなく、データの分析・利用が広がる中での標準となり、データ分析を生かした事業運営の基礎を築くことになる。データの「分析・利用」の運営モデルについては、今後の連載の中でも再度取り上げる想定であるが「Velocity(速度・頻度)」を失うことなく、業務・サービスに活かすという観点を大事にしていただきたい。

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