600億ドルの腕時計市場
まずロジックについて、Bloombergではシティグループのアナリストが出した腕時計市場のレポートを引きながら、次のように記している。曰く、
- 世界の腕時計市場は今年600億ドルを超える規模(売上高)まで成長する見通し
- 腕時計市場の粗利率は約60%
それに対して、
- テレビ市場の規模は1190億ドルになる見通し、粗利率は15%程度(腕時計の4分の1程度)
つまり、
- 600億ドル×60%=360億ドル > 1190億ドル×15%=178.5億ドル
ということで、仮にどちらの市場でもアップルが10%のシェアを取るなら、腕時計市場の方がより儲かる、という筋立てだ。
私自身、腕時計に興味がないというか、着けるのが嫌いなせいか、腕時計の市場規模を目にしたことがこれまでなかった。そのため「600億ドルもあるのか!」と素直に驚いてしまった。
たしかに、すでに2190億ドル規模に達しているスマートフォン市場には届かないかもしれないが、それでも600億ドル超といえば、多めに見積もって約3割の大きさだ。しかも製品の粗利率は約60%と、iPhoneの50%以上を上回り、さらにまだこれといった強力な競合もいない。
「アップルは実にいいところに目を着けた」と、一見そんな風に思ってしまった。
「破壊」を仕掛けるには絶好の腕時計マーケット
Bloombergの記事には、現在の腕時計市場が、新規参入者にとっては「破壊するのに絶好の状況」というような描き方をしている部分もある。
具体的には「Stock Rally」という小見出しの前後がその部分で、「ちょうどiPhone登場前の携帯電話市場のような状況」「大手のフォッシルやモバドの株価は2009年末から3倍以上に増加」「最大手のスウォッチグループは、先月の好決算などを受けて株価が過去最高に」などとある。
そして「こうしたゲイン(売上、利益、株価などを指すのだろう)があると、リスクをとってまでスマートウォッチのような新しいものを投入しようという意欲はそれだけ低下する」という趣旨の結論めいたものも書かれている。