ハリー・ウィンストンまで買収したスウォッチ
さて。
ここまできて、アップルの標的になりそうな「スウォッチはどれほど肥え太っているのだろう?」という点が気になり、Bloombergのいう好決算がどんなものだったかを調べてみた。
そして、Reutersにちょうどいい記事が出ていたので読んだのだが、かなりがっかりしてしまった。
たしかにスウォッチの業績はめざましかったようだ。
この記事を読むと「2012年の純利益が前年比26%も増加して16億1000万スイスフラン(約17億8000万ドル、1SFR=約99円換算)に達し、アナリストの予想も上回った」などとある。ただし、売上を示す数字は見あたらなかった。
1四半期だけで100億ドルを超える利益を挙げる今のアップルにとって、「年間の利益が17億〜18億ドル」というのは確かにもの足りない規模だが、それでも同市場のプレイヤーはスウォッチだけ、というわけでもない。
むしろアップルにとって問題が大きいと思えるのは、この腕時計市場の成長を牽引しているのが、いわゆる高級ブランドであるという点だろう。
Reutersの記事には、スウォッチ傘下のオメガやティソットといったブランドに加え、競合相手としてカルティエといった名前も出てくる。また、スウォッチ自体もLVMH(ルイヴィトン・モエヘネシー)やバーバリーといったラグジュアリーブランドの持ち株会社と同じグループに分類されているようだ。実際、スウォッチは2012年にハリー・ウィンストンという超高級品の権化のようなブランドの時計および宝飾品部門まで買収しているのだ。
100年輝くダイヤモンド、毎年新製品が出る電子機器
結論としては、腕時計市場がいかに成長していようと、粗利率がどれほど高かろうと、この市場でアップルが戦っていけるわけがない。
なぜならば、高級嗜好品や宝飾品は、長年持ち続けても価値があまり減じないところにこそ価値があるからだ。1年後や2年後にはもっと性能のいいものが出てくることが予想される電子機器とは、水と油のような関係であるともいえる。そもそも、アップルがダイヤモンドを埋め込んだような製品を出す、なんて姿を想像できるだろうか……。
そうだとすると、そもそも(全部とはいわないまでも)Bloombergの試算に使われた「市場規模600億ドル」という数字が意味を持たなくなる。高級嗜好品に分類される製品を除いた腕時計市場の規模が具体的にどれくらいかはわからないが、「600億ドル」を鵜呑みに出来ないことはほぼ間違いない。
こうした「ねじれ」がいったいどこで生じたのか。