60億ドルのスマートウォッチ市場を総取りしても…
Bloombergの記事の引用元になったシティのアナリスト・レポート(「Are Smart Watches the Next Big Global Trend?」)には、「今年の市場規模は推定600億ドル」「仮にスマートウォッチが全体の10%を占めるとすると、市場規模は60億ドルに」などといった記述がたしかにある。
一方、「フォッシルがスマートウォッチ分野に以前から目をつけている」「モバドも今年このジャンルの製品を投入すると見られる」などとあるが、アップルの名前は見当たらない。
繰り返すが、この60億ドルの潜在市場をもしアップルが総取りできたとしても、年間売上が1650億ドルに達した現在のアップルにとって大した足しにはならない。そして、この試算方法の結果では、アップル株式(AAPL)を買った投資家が期待するようなインパクトをもたらすとは考えにくい。
むしろ、昨年の段階で7億台に達したスマートフォンを分母として考え、アップルがiWatchをAndroid端末にも対応させることでスマートフォンユーザー全体の何割かを押さえるというアプローチ——つまり「億」の桁の数字(インストールベース)が見えてこないと、株価に影響を与えるような数字は出てこないように思われる。
ちょっと皮算用してみると、既存製品のPebbleやNike+ Fuelbandがだいたい150ドル程度で、アップルプレミアムを載せられるとしてiWatchの値段を1個200ドル、そして粗利率を50%とすると、100ドル/個×1億台=100億ドル(9300億円くらい)。iPad mini(329ドル〜)の粗利率が約3割とすれば、一台の粗利は110ドルとなるから、iWatchの皮算用としてはこんな感じかもしれない。
話を戻してもう一点、これはより重要なことだと思うのだが、生前スティーブ・ジョブズがテレビ分野について話をしていた時には、参入の障壁として「ケーブルテレビ(有料テレビ放送)市場の構造的な問題」を挙げていた。
つまり、利益率15%程度のテレビモニター(ハードウェア)分野に限定して手出ししようなどと、ジョブズははなから考えていなかったということだ。
だとすると、「テレビ(iTV)よりもiWatchの方が儲かる可能性がある」とするBloombergの記事の主張には、明らかに主題のすり替えが感じられる。
手強いコンテンツ業界や放送・通信業界を相手に、なかなか参入の糸口をつかめずにいるアップルの現状を考えると、何らかの思惑が働いているのでは?といった「ゲスの勘ぐり」もつい働いてしまいそうだ。
ということで、今度は映像コンテンツをめぐる動きについて別途、おそらくかなりのボリュームを割いてお伝えすることとする。
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。