自前デバイスの持ち込み(Bring Your Own Device:BYOD)の取り組みで一番難しいのは、自分たちの組織で経費が削減できるのかを判断することかもしれない。BYODの取り組みは組織によって大きく変える必要があるため、組織でBYODを実施した際の費用対効果を評価するための決まった方法は存在しない。しかしそれでも、BYODを検討しているすべての組織は、事前に徹底的な費用対効果分析を行うべきだ。この記事では、自分の組織でBYODの費用対効果分析を準備する際、念頭に置いておくべき10の検討事項を挙げる。
1.会社で所有しているデバイスに関連する現在のコスト
BYODの費用対効果分析を行う前に把握しておくべき最初の項目は、会社が所有するノートPCおよびモバイルデバイスの入手と維持にかかっている、現在の費用だ。これは、財務部門とIT管理部門の協力が必要な、多くの分野のうちの1つだ。会社で所有しているデバイスの現在の費用を算出する際には、メンテナンス計画や、充電器や保護ケースなどの消耗品などの要素も忘れずに考慮に入れること。
2.MDMソリューションの実装と管理のコスト
モバイルデバイス管理(MDM)ソリューションの実装については、技術的な検討だけでなく、コストの検討も行う必要がある。クラウドソリューションを選択する場合でも、BYODの全体的な予算にMDMのサービスを受ける経費を算入する必要がある。自分自身も含めて、ソリューションの管理を担当するITスタッフの時間あたり経費も算入すること。
3.BYODポリシーの開発と計画管理のコスト
BYODポリシーの開発と、継続的に行われている計画の管理は、顧客に転嫁することができない間接的な業務だ。こういったプロジェクトは、現在のような経済状況では、正当化が難しい場合もあるだろう。BYODポリシーの開発と管理には、プロジェクトマネージャーやさらに上のレベルの関係者(少なくとも最初の段階では)の関与が必要であり、こういった人間の時間は、本来顧客のためのプロジェクトや事業の運営に使われた方がよい可能性がある。BYODに必要な関与を得ることができるのかどうか、スタッフは収益を生み出すプロジェクトに集中すべきではないか、といったことを決断する必要がある。
4.既存の企業セキュリティとヘルプデスク業務の更新
BYODに移行すれば、技術的なインフラの構築と管理、現在行われているサポート業務、BYODユーザーに対するサポート業務の増加などの結果として、企業セキュリティとヘルプデスクのスタッフに余分な責任とコストが生じる。例えば、自分の組織で、次のような経費が積み上がる可能性を検討すべきだ。
- BYODの取り組みに合わせてヘルプデスクのポリシーと手順を更新するコスト。
- 新しいユーザー向け説明文書と、ヘルプデスクの知識ベースコンテンツの開発コスト。
- 既存の企業ITセキュリティのトレーニングを更新するコスト。
- ヘルプデスクスタッフの再トレーニングおよび相互トレーニングのコスト。
5.隠れたバックエンドのコスト
会社のネットワークをBYODデバイスに使わせるためには、隠れたバックエンドコストが必要になる。もっとも大きいのは、エンタープライズソフトウェアのライセンスと増加するネットワークトラフィックだろう。これらのコストの一部は事前の分析で発見できるだろうが、BYODユーザーの流入に対応するために、システムの性能、セキュリティ、管理業務の強化を行う必要が生じ、コストが増えるかもしれない。
6.従業員の士気と生産性の向上
私は今はフリーランスライターであり、自分で使う製品の購入と維持は自分で行っているが、フルタイムの仕事やオンサイト業務の契約をしていた時代に、自分の機器を持ち込めていたらもっと楽だったかもしれない。使い古されたPCや、ひどい実装のバックエンドシステムを動かし続けるのは、自分のチームや自分自身の士気や生産性にとって、マイナスになることが多かった。