ざっくばらんに話し合えるペイジとピチャイ
さらに、グーグルにはそれよりもっと大きな経営戦略上の課題がある。
いよいよ存在感と勢力を増すAndroidとChromeとの利害衝突という懸念だ。
勝手な推論(極論)を言えば、ペイジにとっては「すべての計算処理をクラウド上——グーグル・クラスターという『ひとつのコンピュータ』上で行う」というのが理想像なのかもしれない。その方が効率が良く、アプリベースのAndroid端末というのは、あくまで通信インフラが未完成な段階での暫定的な対処策に過ぎないのかもしれない。
そしてまた、外部環境がどんどん「ポストPC」時代に向かって進んでいるなかで、ルービンがAndroid事業を「自分の縄張り」として押さえ続けていては、ペイジとしては何かとやりにくい。
そう考えると、ペイジの意をくむピチャイがChromeとAndroidの両方を見た方が何かと都合がいい。
Fortuneに掲載された記事(註4)には、ペイジとピチャイは「かなりざっくばらんに話ができる間柄」という記述が見られる。この記事を書いたミゲル・ヘルフトという記者が2012年11月にラリー・ペイジにインタビューしたとき、二人の様子からはそういう親しさが感じ取れた、ということである。

ブラウザとOSの両Chromeを担当するサンダー・ピチャイ。Googleではベテランといえる部類に入る
結果を出せなかったフーバー
一方、マップおよびコマース関連の担当を外れるジェフ・フーバーについては、Business Insiderの記事に面白いことが書かれている(註5)。
CEOになって組織再編・責任分担の見直しに着手したラリー・ペイジに対し、フーバーが「自分にマップとコマースをやらせてくれ」と申し出た。そうして、それまで広告事業で線引きが曖昧だったスーザン・ウォジッキ(現検索広告事業責任者)との棲み分けができた、というのである。
その結果、フーバーのチーム(Local & Commerce部門)には、Payments、Wallet、Offers、Shopping、Local Search、Maps & Earth、Travelなどのプロダクトが集められ、従業員の数では社内で一番の大所帯(ただし、モトローラよりは少ない)となった。たくさんのリソースが投入されたということだ。
しかし、フーバーのリーダーとしての力量が今ひとつだったのか、チームはまとまりを欠き、なかなか結果を出せず、マリッサ・メイヤーをはじめとする上級幹部が何人もグーグルを離れてしまった、とある。