OracleのプレジデントであるMark Hurd氏が来日、3月25日に会見を開いた。会見の中でHurd氏は、現在企業の中で使われているビジネスアプリケーションは「古い、近代化する必要がある」との見解を明らかにした。
Hurd氏はOracleが現在進めている戦略は4つの柱からなっていると説明。同社の戦略は(1)Best of Breed(2)統合(3)クラウド(4)インダストリーの4つになる。
1つめのBest of Breedは、CPUやOS、サーバなどのハードウェア、ウェブアプリケーションやデータベースなどのミドルウェア、そしてビジネスアプリケーションなどすべてのコンポーネントで「最高でありたい」(Hurd氏)とし、それぞれの分野でNo.1を取りに行きたいという狙いを隠さない。
2つめとなる統合では、CPUやOSからビジネスアプリケーションのすべてのレイヤを統合したシステム製品を提供することを指している。同社独自の製品開発コンセプト「Engineered System」を具現化したデータベース専用機の「Exadata」やウェブアプリケーション専用機の「Exalogic」、データ分析の専用機「Exalytics」、SPARC/Solarisがベースの「SPARC SuperCluster」といったEngineered Systemsになる。
Mark Hurd氏
Hurd氏はEngineered Systemsについて「統合作業やシステムの稼働テストなどをOracleが出荷前にすべて行っている」と説明。Engineered Systemsには「サポートしやすい」(Hurd氏)というメリットも強調。Engineered Systemsは、Best of Breedによるコンポーネントを最高にすることで、ほかのベンダー製品との異機種混在でも対応できるとし、同社の戦略に優位性があると表現している。
Oracleの戦略の3つめはクラウドだ。Oracleが現在提供する「Oracle Cloud」は、Engineered Systemsが基盤。ユーザー企業のオンプレミスやプライベートクラウドでEngineered Systemsが稼働していれば、「処理能力が足りなくなったら、Oracle Cloudからリソースを借りることができる」(Hurd氏)と、そのメリットを強調している。
戦略の4つめとなるインダストリーは、業種業態ごとに特化した製品を提供するというもの。Oracleはたとえばデータベースなどのミドルウェア、サーバなどハードウェアやソフトウェアの機能の優位性を前面に出すことが多い。その反面、業種や業態ごとに必要とされるものを提供することはあまり多くない。そこで、同社の戦略として、業種業態ごとに向けた製品を打ち出すことを狙っている。
Hurd氏はOracleでは「研究開発に年間50億ドルを投資している。今後はM&Aもしながら、SaaSを拡大させていくことになるだろう」と今後を見通した。現在の企業で稼働するシステムについてHurd氏は以下のような見方を示している。
「現在の情報システムを劇的に変化させているのはコンシューマライゼーションだ。今の子どもたちが使いこなしているスマートフォンは、私がIT業界に入った頃のメインフレームと同じような処理能力だ。現在のスマートフォンのユーザーは、システムのアクセスに対するレスポンスは厳しい要求となっている」
スマートフォンに慣れているユーザーは「アクセスしたら即座に反応しなければいけない。現在世界で80億~90億のモバイル端末が使われているが、今後5年間で500億台に増えると予測されている」(Hurd氏)。現在、企業で活用されているビジネスアプリケーションはこうした状況を想定していないことからHurd氏は「アプリケーションが古い」と表現している。
そうした認識からOracleでは、複雑なシステムを簡素化、シンプル化することを勧めている。現行のシステムを統合してより簡素化するべきという。そのシステムの簡素化と同時に、現在の環境に対応できるようにアプリケーションの近代化にも投資するべきと主張している。
OracleはSaaS「RightNow Cloud Service」を提供するデータセンター日本国内に開設、同日から提供を開始した。Hurd氏によると、データセンターは世界でほぼ同じものであるという。日本国内のデータセンターからはRightNow以外のサービスも提供することが可能と説明している。