ところで、このOTA勢の存在がメディア企業=映像コンテンツ保有者に対してプラスとマイナスのどちらの影響をより多く及ぼしそうか。この点については正直まだよくわからない。
3月半ばに掲載されたWall Street Journalの記事には、Disney、News Corp.(=Fox)、Time Warner、Viacom、Discovery、CBSというテレビ大手6社で、ストリーミングによるビデオ・オンデマンド・サービス(SVOD)の売上が増えてきており、特にCBSではすでにSVODからの売上が全体の1割に達しているという。メディア企業にとっては、過去の番組に対してライセンス料を支払ってくれるOTA勢は、短期的にみればいい顧客ということらしい。
長い目で見ると、対OTAビジネスがメディア企業内部で既存事業のカニバリゼーションにつながり兼ねないという懸念も指摘されている。ネットでSVODを観ることに慣れてしまうと、視聴者はもうテレビCM付きの「放送」など観なくなる。
広告収入の伸び悩みや減少をOTAへのライセンス料引き上げで補えればいいが、NetflixやAmazon.comは、ある種のけん制材料として独自の番組制作と配信を始めつつあり、そうそう簡単には思い通りの条件を飲んでもらえそうにはない……。
なお、Wall Street Journalの記事で紹介されている米Sanford C. Bernstein & Co.の情報によると、SVODの現在の売上規模は年間15億ドルで、メディア企業大手6社全体のほぼ1%に過ぎないが、営業利益に占める割合は約5%、粗利率は85%にもなるという。また、売上規模も今後数年で40億ドル程度まで増加する見込みだという。