PwC Japan は、1月の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に合わせて発表した「第16回世界CEO意識調査」における日本企業の最高経営責任者(CEO、162人)の回答結果を発表した。世界CEO意識調査は68カ国の主要企業の1330人のCEOを対象に実施したもの。
日本企業のCEOの約7割が今後1年間の業績に自信を持っていること、サプライチェーンでは集中より多様化を重視し、リスクイベントへの対応では予測より回復に重きを置いていることが分かった。また、人材戦略を重視する一方で、後継者育成計画を実施するとしたCEOは3割台にとどまったとしている。
調査の主要項目とするCEOの「成長への自信」をみると、今後1年間の自社の業績見通しについて「自信がある」と回答した日本のCEOは73%で、前回2011年の調査結果(78%)から5%低下し、2年前の2010年と同水準となった。
世界全体の結果と比べた日本のCEOの回答の特徴として、今後業績を伸ばしていく上で、国内外の既存市場で本業を重視する割合が高いこと(60%)が挙げられた。また、成長を見込む海外市場としては中国(48%)やタイ(26%)、インドネシア(23%)などのアジア諸国を重視する割合が大きかった。
一方で、脅威として為替レートの変動を懸念している回答の割合が高いこと(74%)が特徴的だった。
今後の組織運営の面では、サプライチェーンについては集中化よりも多様化を重視するCEOが多かった(66%)。日本企業が東日本大震災やタイの洪水で被害を受けた影響が表れているという。リスク管理の資源配分ではリスクイベントの予測よりも、発生後の回復を重視する割合が高い(57%)のが日本の特徴とした。
さらに、人材戦略を重視する傾向は世界全体と同レベルに高いものの(80%)、後継者育成計画を実施すると回答した日本のCEOは34%と、世界全体の71%に比べて低い水準にとどまった。
PwC Japan 日本代表の鈴木洋之パートナーはプレスリリースで次のようにコメントしている。
「ITの発展によって世界経済の統合が進む中、世界の片隅で生じたリスク事象が思わぬ形で自社の活動に影響を与える脅威ととらえられている。アジアの成長を取り込みながら発展を目指す日本企業にとって、世界のどこかで生じる災害や急激な市場変動に対して、迅速でしなやかに対応できる組織体制の整備が大きな課題となっている。新たに進化してきたソーシャルメディアの影響力を理解した活用などは、付加価値の高い事業への資源再配分など新陳代謝の促進や女性労働力の活用による事業拡大と並んで、今後の発展を支える重要な鍵になる」