ウェブ戦略にビッグデータを駆使するリクルートの「SUUMO」 - (page 2)

岡田靖 怒賀新也 (編集部)

2013-04-01 07:30

分析者というよりマーケター

 こうした評価を元に無駄な施策を削ったり、より有効な施策に置き換えたりなどの最適化を行って作成された広告ポートフォリオは「数億円単位で効率化できている」(川本氏)とのことだ。

 「解析や予測に携わるチームには、数名の統計のプロが集まっています。統計分析を目的としているわけではなく、事業課題を定義した上で、課題解決へ向けて進むための分析を行います。ですから彼らは分析者というよりマーケターという自覚を持っています」(川本氏)

 現在、SUUMOのユーザー数は1000万に迫る規模となっている。その日本のオンライン人口の1割近いユーザーを、サイト内の膨大な物件情報とどのようにマッチングしていくかも、SUUMOが直面する課題だ。

「探していただく」から「提供する」はウェブの根本的な変化

 「ウェブサイトの黎明期、成長期は、アーリーアダプター、つまりアクティブで積極的なユーザーが多かったのですが、最近ではユーザーの裾野が広がって、能動的に必要な情報を登録して探すユーザーばかりではなくなってきています。

 今後は、カスタマーにウェブサイト上で『探していただく』だけでなく、カスタマーが求める情報を『提供していく』方向が求められ、あまり能動的でないユーザーに対しては、レコメンデーションで情報提供を行うなど、サイト内に高度な知能を実装することが必要になってきます」と川本氏は言う。

 レコメンデーションといっても、SUUMOではECサイトなどのレコメンデーションとは違った技術が求められている。

不動産という商品の独自性への対応

 物件は一物一価のユニークな存在であり、「この商品を買った客はこんな商品も」といった単純なレコメンデーションはできない。また、一人ひとりのユーザーをみれば、ほとんどは初めて、または久し振りに物件を探すのであり、サイト側ではそのユーザーの過去の行動についての情報を持っていない。いわゆる『コールドスタート問題』がつきまとうという。

 「レコメンドに関しては、物件がユニークな存在であることから、特性の似た物件どうしで少しずらしてレコメンドするなど、不動産ならではの工夫が必要です。アルゴリズムについても、現在いくつかのものを使って取り組んでいますが、それぞれメリット・デメリットがありますね。いくつかの手法を論文から発見し、実際にテストしてみたりしています。数カ月をかけて、数種類のパターンを適用し、それぞれどのようなユーザーの反応があったかを探ってきました」(川本氏)

 ユーザー行動の情報は、サイトのユーザーインタフェースの設計にも影響している。特にスマートフォンやタブレットでは、単なる画面の使い勝手だけでなく、使われるシチュエーションまで考慮していく必要があると川本氏は言う。

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