ARMアーキテクチャのサポートはユーザーの要求次第
ところで現在マイクロソフトが公開している組み込み用Windowsのロードマップの中には、Windows 8からサポートが始まったARMアーキテクチャは含まれていない。
「2012年秋に来日した時点で話した通り、現在公表しているロードマップの中にはARMアーキテクチャはない。今後のことで話せることはない」とボラディアン氏。
ARMアーキテクチャを採用したWindows RTが商品化されているが、ARMの強みはWindows Embeddedが得意な小型機器に適していることであり、長時間バッテリーが保つことだ。タブレット端末である「Surface」のようなWindows RT搭載のパソコンだけでなく、色々な形態のデバイスにARMアーキテクチャは適しているとされている。
しかし、ARMアーキテクチャがサポートされてから時間が経っているのに、Windows Embeddedのロードマップに含まれていないことは不思議だ。
Windows Embeddedファミリーの提供時期を示すロードマップ
「その理由に対して何か言及できるわけではないが、現在、顧客がどういう要求を持っているのかが重要だ。現行のWindows Embedded 8 ProはActive Directoryに対応し、管理のしやすさ、高セキュリティを実現し、すぐにエンタープライズシステムに接続できることが利点。これはユーザーのニーズに基づいたものだ」(ボラディアン氏)
エステガシー本部長も、「たとえモバイル版でも、BitLockerのような暗号化の仕組みなどProのフィーチャが必要なのが現在のニーズ」と言及する。
組み込みシステムであっても、エンタープライズシステムとの連携、そして管理やセキュリティの仕組みが必要だとマイクロソフト側で考えていることがよく伝わってくる。そしてこうした環境が現行のARMアーキテクチャではそろっていない。それが、Windows Embeddedのロードマップに登場しない要因の1つともなっているようだ。
また2012年、Windowsディビジョンの責任者であったスティーブン・シノフスキーが退社し、ジュリー・ラーソン-グリーン氏、タミ・レラー氏の二人がWindows事業を率いることになった。Windows Embeddedの開発に何か影響はあるのだろうか。
「この件についても何も言うことは出来ないが、2012年秋に発表しているロードマップ通りに製品がリリースされているという実績を見てほしい」とボラディアン氏は応じた。