思考特性
ブリッジ能力は東アジアで活躍する、高い業績を残す人材に関する調査によって導き出した知見です。対象者は日本、中国、ベトナムの主要都市で活動するコンサルタントやソフトウェア技術者、ハードウェアマネジャーおよび現地経営者です。
ブリッジ人材を中心に60問の問題解決スタイルアンケート調査をしました(N=400)。その中で着目すべき点は「思考スタイル」にありました。
心理学者のスタンバーグによれば、思考スタイルとは「考え方の好みのことであり、能力ではなくて、能力の使い方」を指しています。思考スタイルは全部で13因子ありますが東アジアで活躍するブリッジ人材の思考スタイルの特徴は、国内のソフトウェア技術者、ハードウェアマネジャーと比較すると、「立案型」「序列型」「評価型」「巨視型」の4つ(表2)が高いことにありました(統計学上の有意差が認められています)。
表2 東アジアで活躍するブリッジ人材の特徴的な思考スタイル
つまり、この4つのスタイルの組み合わせが、異なる価値観を受容し情報非対称を解消し、環境に応じて場を最適化できる力の基盤(能力の使い方)であることを示唆するわけです。
4つのスタイルを活動レベルでまとめると「自らのやり方を模索し、問題を部分より全体でとらえ、優先度、手順を明確にする――実行の際にはその決めた方法を重視し、関係者間で評価や判断が別れた場合でもしっかり受け入れ、十二分に検討し、妥当解を模索する傾向が強い」と解釈できます。簡潔にまとめると「着眼大局、着手小局思考」というところでしょうか。
この特徴はベテランのコンサルタントの思考特徴と似ています。つまり、高い業績をもたらすブリッジ人材の思考は、ベテランコンサルタントに似ていることが示唆されたのです。
経験知
次に着目すべき点は経験知にありました。
表3は、日本、中国、ベトナムのブリッジ人材(21人)の経験した価値観、考え方、行動様式の違いを質的データ分析法によってまとめたものです。
調査時期は2007年と2011年。対象者は日本、中国、ベトナムの主要都市で活動する現地経営者、ブリッジ人材が中心です。約1時間のインタビューを「半構造化面接法」(質問は事前に決めておくが、順番にはこだわらない)で実施しました。
表3 価値観・考え方・行動様式等の相違点
インタビューで得たデータを分析した結果、高い業績をもたらすブリッジ人材は、日本人ビジネスパースンの価値観(会社重点主義、同質性を求めるなど)、中国人ビジネスパースンの価値観(家族重点主義、個別性を求めるなど)、ベトナム人ビジネスパースンの価値観(家族重点主義、個人の成長を求めるなど)の違いを受容しつつ、仕事や顧客の考え方や行動様式を場に応じて最適化し、問題を解決していたことを確認したのです。
つまり、仕事の質の高いブリッジ人材は、国や地域によって異なる言語、価値観、文化の違いを受け入れ、ビジネスを発注側の理屈で押し通さず、粘り強く問題を解決していたことが明らかになったのです。
例えば、ベトナム・ホーチミンにおける以下の事例が象徴的です。(インタビュー抜粋)