日本の規律文化遵守 vs ベトナム文化容認
「ベトナムの女性はアオザイという民族衣装を身につけますが、工場なので女性社員も通常の制服を用意しました。なぜならアオザイは女性の身体にフィットしたオーダーメードなので、とても対応はできません。しかし、文化を重んじる女性陣から不満が続出したのです。そこにベテラン男子工員も加勢し、数百人規模の不満分子となっていきました。そこでひるんでは収拾がつかなくなると思い『ベトナムの文化は大事にするが、日本の企業(工場敷地内)で働く以上日本のルールに従ってほしい。日本では制服のサイズはS、M、Lなのでその中から選んでほしい』と真摯に説明したところ、少しずつ理解が広がりました。納期遅れなどの問題は起きなかったですね。やはり、異文化を受け入れた上で、相手の価値観を否定せず、納得できるように説明し、お互い高い常識を共有する努力が大事です」(M氏)
グローバル経営には組織の規則、価値観、民族文化のせめぎ合いはつきもので、このケースでも工場の規則とアオザイ文化が衝突しました。そこで、「高い常識」を順守するマネジメントが問題解決につながりました。このように、異文化を受け入れ、粘り強く問題を解決できる人材がブリッジ人材なのです。
次回3回目は最終回です。最終回は高い業績をもたらすブリッジ人材の発掘、育成方法を紹介します。
- 豊田貞光
- 産業能率大学総合研究所 主席研究員
- 民間企業でマーケティング部門等に従事、89年産業能率大学総合研究所入職。知識創造理論、人的資源管理論を基盤にIT化と暗黙知共有モデル構築、中国オフショア開発プロジェクトの経営指導など実践。ITスキル標準(ITSS)のツール開発にもかかわる。研究論文の発表多数。資格等:ITコーディネータ、博士(知識科学) 。