IDC Japanは4月10日、オープンソースソフトウェア(OSS)の利用実態調査の結果を発表した。国内のユーザー企業を対象にアンケートを2012年12月に実施。一次調査で1124社、二次調査で309社から有効回答を得た。
一次調査では、自社の情報システムでのOSSの導入状況を調査した。OSSを「本番環境で導入している」と回答した企業は25.3%と約4分の1を占めた。「試験的に導入している」は5.7%、「導入に向けて検証している」は5.8%、「これから導入の検討をしていく」は13.3%となり、OSSの導入に向けて取り組んでいる企業も約4分の1となった。
導入状況を業種別に見ると、「本番環境で導入している」という回答率が最も高かったのは通信情報で30.6%、次いで公共公益が28.9%、金融が25.6%と続いた。最も回答率が低かった業種は流通で20.8%となった。
従業員規模別では、従業員数5000人以上で「本番環境で導入している」の回答率が37.2%と最も高く、大手企業でのOSS導入率の高さがうかがえるとしている。最も回答率が低かったのは従業員数100~499人で19.9%となった。
二次調査では、OSSを導入している企業に詳細な利用実態を調査。使用しているOSSの種類では「オペレーティングシステム(OS)」が47.6%で最多。「ウェブサーバ/アプリケーションサーバ」「データベース管理システム」「メール/グループウェア/コラボレーションツール」が続いた。
これから使用したいOSSとしては「仮想化ソフトウェア」「システム運用管理ソフトウェア」の回答率が最も高く、30%を超えた。仮想化基盤の構築、管理でのOSS活用への関心が高く示されたと表現している。
ユーザー企業のOSS活用メリットとしては「導入コストを削減することができる」が52.1%と最多。次に「運用保守コストを削減することができる」が38.8%となり、コスト削減に対するメリットが評価されていると分析している。そして「ベンダー依存を排除できる」「ソフトウェアの選択肢が広がり、自社に最適なものを探すことができる」が続き、OSSのオープン性も大きなメリットとして考えられると分析している。
一方、OSS活用のデメリットとしては「緊急時のサポートが迅速に受けられない」が34.6%と最も多く、「ベンダーやSIerのサポートが継続して受けられるかどうか不安である」が31.4%で続いた。OSSのサポートに対する懸念の高さがうかがえると解説している。
IDC Japanは、注目を集める「OpenFlow」や「OpenStack」といったクラウド関連ソフトウェアについて、サーバの仮想化を実施している、検証している企業112に対して調査した。OpenFlowを利用してネットワークの仮想化を実施している企業は3.6%にとどまっている。
だが「利用に向けて検証している」企業は17.0%、「利用を検討している」が41.1%となり、利用意向が高いことが判明。OSSのクラウド基盤を構築、管理するソフトウェアの利用を検討している企業は33.9%、利用していきたいOSSとしてはOpenStackのほかに「CloudStack」「OpenNebula」に対する関心が高いことも明らかになっている。
IDC Japanの入谷光浩氏(ソフトウェア&セキュリティマーケットアナリスト)は「これまでOSSは商用ソフトウェアの代替という認識が強かったが、今ではOpenStackやOpenFlow、HadoopなどのようにOSSが新しいソリューションや市場を創り出している」と説明して、以下のように提案している。
「ITベンダーはOSSを活用したソリューションを積極的に展開し、新しいビジネス機会を獲得していくことが重要となる。サポートを含め継続してOSSソリューションを提供することでユーザー企業からの信頼が高まり、OSSビジネスの価値も高まっていくことになる」