Service Provider SDNにはもう1つ、アプリケーションにネットワークをエクスポーズするという役割もある。これを利用してアプリケーション管理者はネットワーククラウドで動くアプリを開発できる。
重要なことは、EricssonのService Provider SDNではこれまでのネットワーク管理、SDNネットワーク、非SDNネットワーク、OpenFlowとさまざまな技術ドメインに対し共通の制御・管理を可能にしていくということだ。これを土台として、アプリケーション向けにフローを動的に構築するサービス・チェイニング(Service Chaining)というアプリケーションを開発している。
フローのポリシーを動的に変更することで、これまで数週間かかっていた変更作業をその場で完了できるようになる。サービス・チェイニングは2013年第4四半期に商用化を予定している。
SDNは自動化技術なのでそれ自体は新しい機能を持つものではない。だが、数週間の作業がすぐに完了するなど、クラウド向けのディストリビューションの仕組みを提供するものだ。
--Service Provider SDNを含むEricsson Cloud Systemについて教えてください。
Ericsson Cloud Systemは、Service Provider SDNとネットワーク対応クラウドを土台とするもので、技術コンポーネントとしてはOpenStackおよびKVMハイパーバイザーを土台とする仮想化環境「Cloud Execution Environment」、および運用支援管理(OSS)と管理機能を組み合わせた「Cloud Manager」で構成される。これを利用して、ネットワークをクラウドコンピューティングのプラットフォームにマイグレーションする。
仮想化でネットワークリソースを効率化
メリットはさまざまだ。仮想化によりネットワークリソースの利用を効率化でき、スケールアップ/ダウンの拡張性や柔軟性を得られる。協調や管理機能を利用して夜間はネットワークの一部を閉鎖するなどの調整を行えば、ネットワークの消費電力効率も改善する。サービス開発から提供までの時間短縮も可能だ。さらにマルチテナント機能を利用し、特定のアプリーションを分離するなど、さまざまなことに利用できると期待している。

Smart Services Routers(SSR)
強調したいのはオープン性だ。Ericssonのアプリケーションだけでなく、さまざまな種類のアプリケーションを動かせる。単にネットワークの仮想化にとどまらず、新しい可能性も見えてくる。
例えば、ネットワークを利用するスマートメーターと電力会社の電力グリッド制御が接続することで、早期に異常を検出できるようになり停電などの障害を回避することができる。新しいエコシステムの構築を促進するイノベーションプラットフォームになるだろう。
--Ericsson Cloud Systemが、既存のポートフォリオにどのようにフィットするのですか?
Ericsson Cloud Systemは既存のEricssonのハードウェア(サーバクラスタの「Ericsson Blade Systems(EBS)」、固定・モバイル向けルータ「Smart Services Routers(SSR)」)で動く。これを土台とし、クラウド時代に向けた製品ポートフォリオのマイグレーションを進めて行く。
最終的には、すべての製品ポートフォリオを仮想化し、クラウドで動かすことができると見ている。例外として、基地局の中で性能に直接影響する部分は現時点では仮想化の対象にはならないと考えている。