それでも、この「摩擦」に着目したのには主にふたつの理由がある。そのひとつは、例の法人税(米多国籍企業の超節税対策)をめぐる英・仏などの政府との一連の問題と、この件が関係しそうに思えたこと。そしてもうひとつは、将来のフランス政界を背負って立つかも知れないエリート官僚、若き女性閣僚が「アップルにもの言いをつけた」ということだ。
アップルやグーグルをはじめとする米企業の超節税対策や、それに対する欧州各国政府からの風当たりの強さといった話題については、これまでに何度も採り上げてきた。
こうした流れを踏まえて眺めると、このApp Storeの問題は面白い伏線になるのかもしれない……。そんな感触というか期待感もあるが、いまのところ具体的な手がかりがあるわけではない。それでも、この話題に触れたReuters記事のなかには、グーグルが今年2月に、Google Newsをめぐって仏政府と手打ちをした際の話が引き合いに出されている。
新聞・雑誌の見出しと抜粋をタダでつかうグーグルに対して、フランスのパブリッシャー各社が利用料の支払にを要求して揉めていたこの件は、結局グーグルが新設される特別な基金に8200万ドルを拠出するという形で決着をみたが、その際にオーランド政権はグーグルに対して「何らかの合意が得られなければ、検索ページのリンクに課税する法案の提出も辞さない」と脅しをかけたとか、和解に向けた交渉の最中には「フランス国内でのグーグルの事業展開について仏税務当局の査察が入った」などと記されている。
そして、グーグルのエリック・シュミット会長を相手にこの取引をまとめたのが、今回の話の主役、フレール・ペルラン大臣だとThe Vergeには記されている(註3)。
そのペルラン大臣については、フランス語以外の情報があまり見あたらず、Fleurがフランス語で「花、華」を指すことくらいしかわからない当方にとっては、その分難儀な作業だったが、それでもたとえば「目標1000社設立!」みたいな感じで「パリを世界でも一流クラスのインキュベーションセンターにする」という計画をぶち上げたり、政府が株式を保有する仏通信大手企業の大規模監視システム輸出に反対の見解を表明して波紋を呼んだりなどといった話がみつかった。
なかなか威勢のいいところもありそうなペルラン大臣が、Facebookのシェリル・サンドバーグCOOやYahooのマリッサ・メイヤーCEOあたりと、税金の問題などで丁々発止のやりとりを繰り広げるような日がきたらずいぶんと面白いだろうな……。と、野次馬は勝手に期待している次第である。
このRude Baguetteというブログに関係する在仏米国人は、「それじゃあハコモノ行政じゃないか」という趣旨の批判をしている。