科学的管理法の終焉とこれから--ループス斉藤氏

岡田靖 怒賀新也 (編集部)

2013-04-17 08:00

 米Oracleのラリー・エリソンCEOとソフトバンクの孫正義社長が基調講演を務めた4月9日のイベント「Oracle CloudWorld Tokyo」の特別講演で、ループス・コミュニケーションズの代表取締役、斉藤徹氏は「加速するソーシャルシフトがもたらすビジネスインパクト」について語った。

 斉藤氏は、2011年11月に出した著書『ソーシャルシフト』の中で、以下のような3つの動きがソーシャルメディアの加速によってもたらされるとしている。


江戸時代から受け継いできた「三方よし」の理念に学べ

  • 生活者が力を持ち、企業を選別する
  • 社員が力を持ち、中央統制が崩壊する
  • 生活者や社員の力を追い風にできるかが繁栄か衰退かの分かれ目となる


ループス・コミュニケーションズ代表取締役 斉藤徹氏</p>
ループス・コミュニケーションズ代表取締役 斉藤徹氏

 このような考え方は、実は昔から存在していた。例えば、近江商人が江戸時代から受け継いできた「三方よし」の理念は、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」すなわち商売人自身のみならず顧客やパートナー、さらには世の中(地域社会)にも良い結果をもたらすような商売をすべし、といった考え方を説いている。

 日本各地で事業を展開した近江商人は、それぞれの地域社会においては余所者(よそもの)であり、各地に根付くためにこのような考え方が編み出されたという。

 また、1980年代の例では、スカンジナビア航空(SAS)が自社再建において顧客の印象を重視したビジネス戦略を展開していた。

ソーシャルメディアが「真実の瞬間」を切り取る

 その内容は『真実の瞬間』という本に詳しく説明されている。年間1000万人の乗客が利用するSASだが、顧客が社員に接触するのは1度の利用あたり5回、それぞれの接触は15秒。当時の最高経営責任者(CEO)のJan Carlzon氏は、この15秒で顧客の脳裏に印象が刻まれると考え、その瞬間に重点を置くようにしたという。

 例えば、航空券をホテルに忘れてきたことに気付いた乗客に対し、空港のカウンターで応対した社員がホテルに連絡して自社のリムジンを差し向け、航空券を受け取ってきた、といったエピソードを紹介する。こういった対応が、まだソーシャルメディアなど存在しない80年代でありながらも「クチコミ」で広まり、SASはV字回復に成功した。

 今やソーシャルメディアが登場し、重要な顧客接点になった。斉藤氏は「ソーシャルメディアを通じて無数の人が真実の瞬間を切り取ってシェアするようになりました。顧客は歩く広告塔であり、顧客接点は広告が生まれる瞬間となっているのです」と指摘した。

利益至上主義に限界--ドミノピザの失敗

 逆に、顧客や社員の心が離れてしまった結果、大きな損害を出した例もある。

 例えば米国のDVDレンタル会社Netflixでは、実質的に大幅値上げとなるようなサービス変更を突如発表したものの、ソーシャルメディア上で顧客からの猛反発を受け、その不評から株価も大幅に下落したことがある。

 また、ドミノピザの例では、厨房の社員2人が商品で不心得な遊びを行う動画を投稿。やはりソーシャルメディアで大炎上、多額の宣伝費を投入するなどして信頼回復に追われることとなった事件がある。

 「経営者の皆さんは、社員・元社員が悪意を持った行為をしないと確信を持てるでしょうか。それは、自社利益ばかり優先して顧客や社員をないがしろにしていないかどうか、でもあります。利益のみを追求した経営ではうまく行きません」(斉藤氏)

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