KVHは4月18日、シンガポールと香港に新たなデータセンターを開設することを発表した。英ITサービスプロバイダーであるColt Technology Servicesとのパートナーシップでアジアと欧州の10拠点で「KVH Cloud Servicesプラットフォーム」の提供も開始。アジア太平洋地域への事業拡大に取り組む姿勢も明らかにした。
KVHの代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)である東瀬テッド氏は、「ビジネスのグローバル化に伴い、アジア太平洋地域でのネットワークインフラに対する需要が急増。こうした市場ニーズに応えるため、アジア太平洋地域における事業を拡大する」と前置きし、以下のように語った。
東瀬テッド氏
「今後5年間でKVHの売上高を2倍にしたい。日本からの売り上げ構成比は現在9割を占めているが、2017年度には、海外からの売り上げ構成比を25%にまで高めたい。日本の経済成長率は、アベノミクスでも2%成長にとどまる。しかし、アジア太平洋地域では、10%以上の経済成長がある。クウラドサービスでも大きな成長が期待される市場である。アジア諸国が成長の触媒としての役割を担うことで、この領域で事業を成長させていきたい」
今後5年間でシンガポールと香港のデータセンター、サービスインフラに対して、1億ドル(約100億円)規模の投資を行っていくという。東瀬氏はまた「従来は全体の40~50%がマネージドネットワークサービスによる売上高であったが、今後、この領域の年平均成長率は7%程度にとどまるだろう。データセンターサービス事業を拡大し、その上でITサービス事業を拡大していきたい」と事業ポートフォリオの転換にも挑む考えを示した。
KVHは日本に本社を置き、すべての意思決定は日本で行い、日本の企業が求める“日本品質”をベースにアジア全域をカバーする体制を構築しているのが特徴だ。
「日本品質をアジア全域で提供していくのが当社の特徴であり、さらにデータセンターだけを提供するのではなく、ネットワークからインフラストラチクャサービスに至るまで自社資産での垂直統合モデルを提供できる。当社ユーザーの半分が金融関連であるのも特徴であり、小規模だが、俊敏性が高く、信頼性が高いという点が評価されている」(東瀬氏)
KVHは現在、東京に4カ所、大阪に2カ所、韓国・釜山に1カ所のデータセンターを設置。これに「KVHシンガポールデータセンター1(SGDC1)」と「KVH香港データセンター1(HKDC1)」を新設。アジア太平洋地域で8番目と9番目の拠点となる。
いずれも最大1MWの電力容量(約160ラック相当)の規模となり、データセンターの品質の高さを示すグレードは“Tier 3+”、KVHの情報デリバリープラットフォームの拡張拠点と位置付けている。コロケーション、マネージドIT、クラウドサービスを提供するとともに、金融センターに接続可能な信頼性の高い、低遅延ネットワークサービスを提供できるとしている。
SGDC1は、コロケーションのリテールとマネージドITサービスを提供する専用データセンターで、シンガポールの金融街から15分未満のジュロン国際ビジネスパーク内に設置する。情報セキュリティの第三者認証となる情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)と国際標準規格のISOに準拠し、高い水準のセキュリティと信頼性を確保しているのが特徴だという。