ここ最近、北朝鮮は軍事的脅威をちらつかせる行動を繰り返している。ほとんどの政治評論家はこういった行動に関して、経験の浅い指導者が、父親の支配下にあった保守的な軍部とともに自らの地位を固め、力を誇示しようとした結果の常軌を逸したこけおどしにすぎないと見なし、紛争を引き起こすつもりなど実際にはないだろうと考えている。
とは言うものの、金正恩第1書記が瀬戸際外交の限界を押し上げようとするあまり、例えば韓国の小さな島を砲撃して軍事力をちょっと誇示しようとしたり、核弾頭の運搬能力を示すためのミサイルテストをさらに実施することで、その一線を越えてしまうというリスクがあるのも確かである。
これをきっかけに韓国と米国が軍事的報復行動に出て、全面戦争へとエスカレートする可能性もある。
このような戦争が起こった場合、韓国のテクノロジ関連施設が標的となるのは間違いない。
もっとも、向こう数カ月間のうちにこうした事態が発生する可能性は低いだろう。北朝鮮の背後にいる中国が金正恩第1書記に対して、そのような愚行に踏み切れば援助や支援を大幅に縮小または打ち切ると告げているのはほぼ確実だ。こうした援助や支援は、軍事的および経済的な観点から北朝鮮の存続に欠かせないものとなっている。
中国の支援がなければ、北朝鮮は飢え死にするしかない。
しかし、雪だるま式に戦争を引き起こす可能性のある、やっかいな問題もある。
この数週間、中国はH7N9型の鳥インフルエンザウイルスの感染拡大を食い止めるための努力を続けている。本記事執筆時点において、上海ではこの病原体による2名の死亡が確認されており、北京市内の病院はパンデミックを食い止めるために必要な物資を備蓄中である。また、こうしている間にも感染者の増加が報告されている。
中国を起源とする新たな鳥インフルエンザウイルスが食物連鎖のなかで他の種に感染し、ヒトからヒトへの感染によって猛威をふるうようになるのではないかと、世界は毎年のように固唾をのんで見守っている。また、上海近くの川で1万6000頭にも及ぶ豚の死がいが見つかり、保健当局はH7N9との関連を調査している。
今回の大発生は迅速に封じ込められ、沈静化する可能性があり、中国における食物連鎖とは何の関係もないかもしれず、現在のところヒトからヒトへの感染が発生しているという証拠もない。しかし、おそらく数年のうちにわれわれは運から見放され、深刻なパンデミックが中国を襲う可能性もある。
パンデミックが発生すると、中国は都市間の移動を制限し、戒厳令を敷くはずだ。このため物資の輸送は制限され、電子機器の製造が困難になるだろう。そして、スキルを身に付けた労働者の多くが病気になった場合、中国のサプライチェーンが完全に機能を停止する可能性もある。
このシナリオが現実化した場合、中国は国内で噴出するさまざまな問題の対処に忙殺されるとともに、Foxconnをはじめとする主な委託製造企業は数カ月、場合によっては1年にも及ぶ操業停止に追い込まれるだろう。これだけでもIT業界に対してさまざまなレベルでの大混乱が引き起こされるはずだ。
ここではまだ、中国国内にある工場の操業停止についてしか述べていない。どのような大発生であっても、総合的な判断には時間がかかる点、そして中国や韓国、日本、その他のアジア諸国間における通商貿易や、商品の大量輸送、サービスの大きな流れ、人の往来の多さを考えた場合、こういったパンデミックが上述の国々にまで及ぶことは想像に難くない。
そして韓国に影響が及んだ場合、事態はさらに深刻なものとなる。