本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、富士通研究所の富田達夫社長と、日本HPの手島主税 事業本部長の発言を紹介する。
「私たちが生み出す先進技術によって、イノベーションをつくり出していきたい」 (富士通研究所 富田達夫 代表取締役社長)
富士通研究所の富田達夫 代表取締役社長
富士通研究所が4月3日、2013年度の研究開発戦略について記者説明会を開いた。富田氏の冒頭の発言は、その説明会で、今後の活動における意気込みを語ったものである。富士通グループの研究開発機関である富士通研究所が毎年恒例で開くこの記者説明会は、国内最大手のIT企業グループの技術革新の方向性が示される貴重な場である。
研究開発戦略の説明に立った富田氏によると、約1500人の研究員が所属する富士通研究所は、富士通グループの既存ビジネスの成長に貢献する技術を生み出す一方、中期的には新ビジネスに向けた持続的イノベーションを、長期的には新しい市場やビジネスの開拓に向けた飛躍的イノベーションを創出していくことをミッションとしている。
2013年度の研究開発戦略におけるトピックは、中期的な取り組みとして2012年度まで掲げてきた5つの「骨太テーマ」を、4つの「骨太領域」に再編したことだ。
具体的には、「ヒューマンセントリックコンピューティング」「インテリジェントソサエティ」「クラウドフュージョン」「グリーンデータセンター」「ものづくり革新」といった昨年度までの骨太テーマが、「ユビキタスイノベーション」「ソーシャルイノベーション」「ICTイノベーション」「ものづくり革新」からなる骨太領域になった。
富田氏によると、こうした再編を行ったのは、富士通が3年前に掲げた「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現」というビジョンの具体的なアクションとして挙げた4項目と整合性を持たせるためだ。
4項目のアクションとは、(1)人が活動する場でのイノベーション実現、(2)ビジネス・社会の情報装備、(3)エンド・ツー・エンドで全体最適化、(4)共通な基盤、からなる。骨太領域とこれら4項目の関係については、ユビキタスイノベーションが(1)、ソーシャルイノベーションが(2)、ICTイノベーションが(1)と(3)、ものづくり革新が(3)と(4)における研究開発の領域になるとしている。
富田氏はさらに、新たに設定した骨太領域は「富士通研究所として今後、どの領域でイノベーションを起こしていくのかという視点で方向性を明確にした」という。そのうえで実際の研究開発テーマを再編したことから、従来の骨太テーマではなく「骨太領域」になったようだ。