組み立て製造業などのIT投資原資が増加へ--中堅中小市場調査

ZDNet Japan Staff 2013年04月22日 14時34分

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 ノークリサーチは4月22日、中堅・中小市場のIT投資に関する2013年春の定点観測調査の結果と分析結果を公表した。組立製造業のIT投資指標が大幅に上昇するなど、全体的に改善の傾向を示した。

 業種別のIT投資動向も分析。調査、分析を担当した岩上由高アナリストは、業種別のIT投資を次のように分析している。


業種別のIT投資DI 業種別のIT投資DI
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組立製造業

 経常利益DIは+20.8ポイント、IT投資DIは+19.0ポイントの大幅な改善となった。経常利益の増加要因では「新たな製品やサービスが好調である」「企業の設備投資が増えている」「在庫調整や生産調整が進んでいる」が多く挙げられ、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは現状から+1.2ポイントの改善となっている。

 一方で、IT投資の増加要因では「サポート期限切れのため、刷新が必須である」が多い。同業種の中には、リーマンショック直後の厳しい状況下でも複数の生産方式に対応するためのIT投資を行いつつ、新しい商材の展開(半導体装置の受託生産から福祉用具メーカーとしての業態拡大など)などといった取り組みを進めてきた企業も存在する。

 今後も一部の企業では新たな取り組みが進むと予想されるが、直近の四半期については更新需要主体のIT投資意向を示している。

加工製造業

 経常利益DIは+10.9ポイント、IT投資DIは+3.4ポイントの改善である。経常利益の増加要因では「新たな製品やサービスが好調である」「在庫調整や生産調整が進んでいる」が多く挙げられる一方、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは+0.6ポイイントとほぼ横ばいになっている。

 また、IT投資の増加要因では「製品/サービスの開発にITが必要である」が多い。同業種では「金属加工のノウハウを生かした鍋製品の開発/販売」や「迅速な製造/納品という強みを生かし、旋盤の交換部品をユーザー企業に直接提供する」といったように下請けにとどまらない業態拡大に取り組む企業も存在する。円安による資材調達コストの増加などを見込んで経常利益の見通しは慎重だが、下請けからの脱却などに伴うIT投資については今後も一部の企業で取り組みが進むと予想される。

流通業(運輸業)

 経常利益DIは+23.7ポイントの改善、IT投資DIは-1.1ポイントの微減となっている。経常利益の増加要因では「業務アウトソーシング活用による影響」「業態の拡大や転換が成功している」が挙げられている。ネット通販における物流サービスニーズの増加などに伴い、同業種の中には従来よりもきめ細かい配送を請け負うなどの取り組みを進める企業も存在する。

 しかし、円安に伴う燃料費高騰の懸念などから、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは-3.6ポイントと慎重な姿勢を示している。IT投資の減少要因としては、「売上低下や人件費上昇などにより、IT投資費用を捻出できない」「景気が本当に回復するかをもう少し見極めたい」といった回答が多い。同業種ではIT投資費用の捻出が容易ではないため、ITソリューションを提供する側としては、ネット通販における物流サービスを請け負うことで短期間に売り上げを向上するための経営プラン提示など、IT活用だけにとどまらない高い視点からの支援が必要になると考えられる。

卸売業

 経常利益DIは-1.4ポイントの減少だが、IT投資DIは+10.8ポイントの改善となっている。経常利益の減少要因では「消費者の購買意欲は依然として低い」が多く挙げられ、アベノミクスの効果が一般消費者の購買意欲を大きく変えるまでには至っていない状況が垣間見える。だが次の四半期に向けた経常利益DI見込みは+4.8ポイントとなっており、時間の経過とともに波及が期待されている。IT投資の増加要因では「サポート期限切れのため、刷新が必要である」に加えて、「販路の創出や拡大にITが必要である」も挙げられている。ITソリューションを提供する側としては、消費者の購買意欲がさらに高まり、同業種の新規投資意欲も高まってきた段階で、ビジネスマッチングサイト活用による機会創出やマーケティング情報提供による付加価値提供などの提案を検討する価値がある。

小売業

 経常利益DIは+11.0ポイントの改善だが、IT投資DIは-0.1ポイントとほぼ横ばいとなっている。経常利益の増加要因では「消費者の購買意欲が高まっている」が多く挙げられている。ただし、小売業は前回調査のDI値が非常に低かったこともあり、アベノミクスの効果よりも前回からの反動も大きく影響していると考えられる。給与改善に先行しての物価上昇などを懸念して、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは-21.8ポイントと厳しい見通しとなっている。物価の上昇を価格に転嫁することが難しいため、IT投資減少要因としても「売上が低迷し、IT投資費用を捻出できない」が多く挙げられている。アベノミクスの効果が一般消費者の給与改善に結びつくまで、同業種のIT活用についてはやや厳しい状況が続く可能性がある。

建設業

 経常利益DIは+6.4ポイント、IT投資DIは+1.3ポイントの改善となっている。経常利益の増加要因としては「公共事業に伴う案件が増えている」が多く挙げられ、次の四半期に向けた経常利益DI見込みも+9.5ポイントとなっている。アベノミクスによる公共事業への取り組みが中堅・中小の同業種にも波及しつつある状況といえる。

 ただし、資材調達力や人材確保力が大企業ほど強くないため、「円安で資材のコストが上がっている」や「人材を確保するためのコストが上がっている」を経常利益の減少要因として挙げる回答も見られる点に注意する必要がある。IT投資の増加要因では「更新需要の時期」が多く、減少要因として「IT投資を捻出できない」「景気が本当に回復するかをもう少し見極めたい」という回答も多い。ITソリューションを提供する側としては、見積/調達の精度や効率を向上させて利益を改善するなど、公共投資で得た売上増の効果を最大化するための提案を行うことが有効と考えられる。

IT関連サービス業

 経常利益DIは+9.4ポイント、IT投資DIは+13.9.ポイントと大きく改善している。「企業の設備投資が増えている」といった経常利益増加要因を受け、自らの製品、ウェブサービスの開発に必要なIT投資を行っている状況といえる。ただし、次の四半期に向けた経常利益DI見込みは-13.8ポイントと厳しい見方を示しており、業態の拡大/転換や販路の確保、ウェブ拡大を課題として挙げる回答が見られる。

サービス業

 経常利益DIは-0.9ポイント、IT投資DIは-0.5ポイントとともに微減となっている。「新たなサービスが好調である」という企業は経常利益も増加しているが、IT投資の増加要因は「サポート期限切れのため、刷新が必要である」が多い状態にとどまっている。次の四半期に向けた経常利益DI見込みも+0.5ポイントと慎重である。現状維持志向を打破するためにも、ITソリューションを提供する側としては必要に応じてコンサルタントなどとも協調しながら、新たなサービス創出とそれに伴うIT活用を提案していくことが今後求められてくると予想される。

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