矢野経済研究所では、POS市場を中心とした、リテールソリューション市場に関して、市場調査を実施しており、先日その調査結果を公表した。本稿はその中身を概観するとともに、今後の市場の展開を展望してみたい。
POS専用機市場の動向
一定規模以上の店舗に導入されることの多いPOS専用機市場に関しては、ほぼ横ばいの状況となって久しい。
国内のPOS専用機市場は、需要の9割前後が自社リプレース、他社リプレースで構成され、既に飽和状態に達しており、ほぼ完全なリプレース市場となっている。
さらに、流通業でのPOSに対するシステム投資手控えの影響から、リプレース期間は長期化しており、致命的な老朽化が進まない限り、POSターミナルをリプレースしないという企業が増えている。
そのような状況下、2010年度のPOSターミナル市場は、メーカー出荷ベースで、数量が13万994台、金額が504億円に、2011年度は若干減少し、12万832台、440億円の市場規模となった。2012年度の同市場は11万8904台、436億円を見込む。
国内POS専用機市場規模推移と予測。矢野経済研究所推計
注1: メーカー出荷(台数、金額)ベース、注2: 見込は見込値、予測は予測値、注3: POS(Point Of Sales system)は、サーバやPOSターミナル(端末)、POSソフトウェア、そのほか周辺機器から構成されるが、本調査ではPOSターミナルの市場規模を算出した。ただし、簡易なPOSターミナル(タブレットなど)は含まない
進まないセルフレジの導入と新たな展開
また、専用機市場の、特に食品スーパーを中心に、顧客自身がレジの処理を行うセルフレジの導入の動きが注目されてきた。混雑時にはレジ待ちに長蛇の列ができることが多いが、自分でチェッカー業務を行うことで、スムーズにレジを通過できるシステムがセルフレジである。これまで、イオンなどの大型のチェーン店を中心に、セルフレジの普及の兆しがあった。
しかし、これまで導入されてきたセルフレジの多くは、精密なはかりを搭載しており、極めて導入コストが高い。しかも、さまざまな試行錯誤の結果、実際に店頭でレジ待ちの列ができないようにするには、一店舗で6台を同時に運用する必要があり、一定以上の規模を有する店舗でないと導入は困難である。また、導入するための投資コストを負担できる企業体力も必要である。そのため、現在、国内においては完全なセルフレジタイプの導入の動きは、鈍い状況となっている。
そのような状況を受け、POSメーカー各社は次のセルフレジシステムを模索している。現在注目されているのは、セミセルフ、あるいはセルフペイメントといわれるシステムである。これは素人には難しいチェッカー業務は店員に任せ、支払い部分のみ顧客自身が行うものである。ベンダーによればこれでも充分な効率化が期待できるという。