リクルート流ビッグデータ活用術

「SUUMO」を動かすデータサイエンティストの取り組み - (page 3)

吉永恵一(リクルート住まいカンパニー データサイエンティスト) 

2013-04-26 07:30

カスタマーコミュニケーションの最適化

 3つ目は、サイト訪問者の膨大な足跡(=アクセスログ)を用いて、どんな情報を、どのタイミングで、どのような手段を用いて、カスタマーに届けることで、カスタマーの検討を次のフェーズに押し上げていくのかという『カスタマー・コミュニケーションの最適化』を実施しています。カスタマーとコミュニケーションする際には、最初に、どのようなカスタマーが自社サイトに訪れているのか、というカスタマーのプロファイルを導出し、コミュニケーションの骨子を作ります。

 具体的には、カスタマーを行動タイプごとにセグメンテーションし、各セグメントの中で、われわれが次の検討フェーズに押し上げたいカスタマーをターゲティングし、それらカスタマーに合わせて提供価値をポジショニングするという、いわゆる「STP(Segmentation Targeting Positioning)戦略」を基にしたコミュニケーション・デザインをきちんと設計し、ウェブリコメンデーションやメール施策といった打ち手に落としていきます。

 例えば、住宅情報サイトである「SUUMO」では、検討確度が浅いカスタマーも深いカスタマーも混在しており、カスタマーニーズも分散しています。それらカスタマーの検討確度やニーズに合わせて、物件情報の出し分け(=ウェブリコメンデーション)を行うことで、カスタマーを次の検討フェーズに押し上げています。

 カスタマー自身の過去の閲覧物件を基にしたリコメンデーション(=コンテンツフィルタリング)や自身と類似したほかのカスタマーの閲覧物件を基にしたリコメンデーション(=協調フィルタリング)だけではなく、マーケターが暗黙知として持っている仮説もうまく融合させながら、表出ロジックを構築しています。

 さらに、これらの打ち手の効果を、「分析アルゴリズム」「表出スペース」「クリエイティブ」という3つの要素に分解し、なおかつ、季節性やトレンドを除外して明確化するために、ABテストの組み合わせ数を拡張した「多変量テスト」という実験計画法を取り入れたフィジビリティテストを実施することで、次の打ち手に対するナレッジを蓄積していくというPDSを回しています。

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