日本IBMは5月13日、同社のオープンクラウド戦略について報道関係者向けに説明した。
3月4日に米本社は、すべてのクラウドサービスとソフトウェアをオープンなクラウドアーキテクチャベースにすることを発表。オープンなクラウド環境ならではの優位性を生かすことで、ユーザー企業に柔軟なプラットフォームの構築を支援するという方針を示していた。
紫関昭光氏
日本IBMの理事でスマーター・クラウド事業部 クラウド・マイスターである紫関昭光氏は「IBMが示したのは、OSSをIBMの製品やサービスに実装すること、そして、IBMのクラウド関連製品やサービスはすべて、オープンクラウドアーキテクチャをベースにするという2点。IBMは2009年に(クラウドコンピューティングの標準化に向けて多くの原則を定めた)“Open Cloud Manifesto”として提唱。約400社が参加して、オープンクラウドの原則を定めた。ベンダーロックインの否定や既存スタンダードの有効利用のほか、複数の標準化団体間の協力といったことを盛り込んでおり、3月の発表はそれをもう一歩進めたものになっている」と語る。
IBMが提供するIaaS/PaaS「SmarterCloud」で推進するオープンスタンダードとして、Open Cloud Manifestoのほかに以下のような「オープンスタンダードを製品やサービスに反映させていくことになる」とした。
- 標準化団体のDistributed Management Task Force(DMTF)で進める仮想マシンのイメージファイルの標準規格「OVF(Open Virtual Machine Format)」
- OSSのクラウド基盤管理ソフトウェア「OpenStack」を管理する団体のOpenStack Foundation
- XML関連の標準化団体であるOrganization for the Advancement of Structured Information Standards(OASIS)の中でクラウド環境でのアプリケーションやサービスの連携強化を目指す「Topology and Orchestration Specification for Cloud Applications(TOSCA)」
- グローバルの標準化団体であるW3Cで技術標準「OSLC (Open Services for Lifecycle Collaboration)」が進められ、その中の標準規格の一つである「Linked Data Platform」
- オブジェクト指向技術の標準化団体Object Management Group(OMG)のユーザーグループの一つであるCloud Standards Customer Council(CSCC)
紫関氏は「多くのユーザー企業がPaaSに入っていきたいと考えているが、PaaSはスイッチングコストが高く、ベンダー間の溝が深い。クラウドは小さくはじめて、大きく育てるというのが基本だが、PaaSの現状をみると、大きく育ったときには、レンタル料金も大きく育ってしまい、しかも、そこから抜けられないという問題が発生する。結果として、PaaSの活用に迷っているユーザー企業が多い」という現状を指摘し、以下のように説明する。
「AmazonやGoogle、Microsoft、Salesforce.comに共通しているのは、プライベートクラウドをサポートしていないという点である。IBMは、パブリックとプライベートの双方をサポートし、インターオペラビリティ(相互運用性)とポータビリティ(可搬性)を実現できる。今後は、ベンダーをまたいだインターオペラビリティを確保する必要もあり、そうした点でも、オープンスタンダードを活用したクラウドサービスに取り組んでいく必要がある」