SAPは5月14日、米フロリダ州オーランドで年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2013」を3日間の予定で開幕させた。初日の基調講演では共同最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏が登壇し、インメモリデータベース「SAP HANA」を土台としたBtoBtoC戦略について語った。SAPはコンシューマーへのリーチを目標に掲げており、ここでも「SAPはBtoBtoCソフトウェアのリーダーだ」とMcDermott氏は宣言した。
HANAはすべてのSAP製品の基盤に
今年でSAPPHIREは25回目を迎えた。第1回はフィラデルフィアのホテルで開催し、参加者は180人だったという。今回は開催場所のOrange County Convention Centerに2万人が来場、オンラインでのブロードキャストを含めると参加者は10万人を数える規模に成長した。
SAPの共同CEO、Bill McDermott氏。祖父はNBAのバスケットボール選手、Bobby McDermottだ。
SAPは、快進撃が続いていると強調する。先に発表した業績発表では、ソフトウェアとソフトウェア関連の売り上げが12四半期連続で2ケタ成長を達成した。「最も価値のあるブランドのうち98%がSAPの顧客」とMcDermott氏は胸を張る。
そこに至る道のりとして、共同CEOとして着任した当初、「SAPは関連性がある存在か、重要な存在か、いなくなったら困る存在かを自答した」とMcDermott氏。技術動向や顧客が向かっている方向を認識し、デザインシンキングを用いて、戦略を立て直したという。そうやって出てきたキーワードが、モバイル、ビックデータに代表されるデータの重要性、そしてクラウドだ。
下支えする技術が、高速分析を可能にするHANAである。2010年に高速データ分析アプライアンス技術として発表、ビジネスインテリジェンス(BI)「SAP NetWeaver Business Warehouse」に対応、2013年1月には、統合基幹業務システム(ERP)パッケージを含む主力の業務アプリケーション「SAP Business Suite」の対応を実現した。
「HANAはSAPが今後展開するすべての製品の土台になる」とMcDermott氏、共同設立者のHasso Plattner氏の実験プロジェクトとしてスタートしたが、急速に成熟していることを示唆した。「世界のトランザクションの75%近くがSAPのBusiness Suiteで処理されている。HANA上で動くBusiness Suiteは100〜2000倍も高速だ」(McDermott氏)。HANAは市場で最も急成長しているソフトウェア製品だという。
McDermott氏はさらに、クラウドソリューションにも言及した。SAPはクラウドに80億ドルを投資しており、今回のSAPPHIREの直前にはHANAをベースとし、Business Suiteなどを利用できるプライベートクラウド「HANA Enterprise Cloud」を発表した。これらはすべて「中断なきイノベーション」を提供するという。
SAPのクラウド製品は3000万人が利用している。「これはクラウド専業ベンダーが実現していない規模だ」とMcDermott氏、このうち1000万人のユーザーが、人材管理機能をSaaSで提供するSuccessFactorsのJamソリューションでコラボレーションしているという。これに加わるのが、2012年に買収したAribaのビジネスネットワーク「Ariba Network」だ。取引高は5000億ドル近くという世界最大のビジネスネットワークとなる。