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マーク・ザッカーバーグの政治団体「FWD.us」の胡散臭さ - (page 3)

三国大洋

2013-05-17 07:30

H1-B(就労ビザ)ー「IT人足」調達のからくり

 さらにこのH1-BビザとIT業界の動きをめぐっては、90年代前半から活動を続けてきているベテランジャーナリストのRobert Cringelyが実に興味深い話をまとめている(註12)。「(米IT業界の)人手不足というのはまったくのでたらめ」「実際に足りていないのは、平均水準以下の賃金で働く労働者」というCringelyによると、あわせて約250万人いるとされるIT分野の労働者のうち約20%がH1-Bビザ保持者(インドからの出稼ぎプログラマーなど)であり、またそれが米国全体で70万人ほどいるH1-Bビザ保持者の大半を占めているという。

 さらに「本来は米国人の人材が見つからない仕事に従事させるために連れてくる外国人向け」という点についても、簡単にいうと「たとえば相場が7万4000ドルほど(の年俸)の内容がある仕事を、5万ドルで引き受けてくれる人材を探しているのだから、そもそも国内で見つかるはずがない」などという指摘もある。

 2012年秋(10月下旬)に書かれた記事では、2008年3月にBill Gatesがこの問題をめぐって連邦議会でした証言を踏まえたものだが、Gatesらが問題視していた本当に優秀な人材の確保なら、毎年発給=割当数の決まっているH1-Bなどではなく、数に制限のない別のビザを使ってやればいいなどと指摘。同時に(今回FWD.usでも打ち出した)H1-Bの大幅増加などが認められてしまうと、既存の働き手から仕事を奪う、もしくは賃金の切り下げにつながるなどと警告を発している。

 そもそもMark Zuckerbergがどうしてこの移民法改正問題に首を突っ込もうとしたかという、その動機についてはいまだによくわからないが、それでもこの人物の「面の皮が厚い」ことはすでに証明された感がある。Facebookでのサービス追加やプライバシーポリシー変更などでこれまで何度かへまをやらかし、そのたびにユーザーから猛烈な反発を食らいながら、それでもなんとか苦境を乗り越えてきたからだが、そんなZuckerbergでもさすがに「割安なコストで使える人手がもっと欲しい」というあけすけな言い方はできなかったのかもしれない。

 そこで「どうせならいっしょに、窮状に置かれた不法移民の子供たちを救え」などと言い出したのではないか……。思わずそんな勘ぐりが働いてしまうが、胡散臭いと感じられる所以(ゆえん)もそこにある。

 あくまでも実利(結果を出すこと)を優先して、こうした問題の解決に前向きな民主党側だけでなく、強い反発を示している共和党側も承知させようとして、Rubioなどの有力議員を巻き込み、「清濁併せ飲む」といった感じで問題のテレビCM放映も認めたFWD.us。

 今回の騒動について、Zuckerbergに近い(つまり、Facebookで儲けさせてもらった)Accel PartnersのJim BreyerやSocial+CapitalのChamath Palihapitiya(チャマス・パリアピティヤ)あたりからは「従来と同じようなやり方(戦術)をしていては、この移民法改正案のような思い切った法案を成立させることは難しい」といった擁護のコメントも出ているが、一方にはこれを批判する声もVinod Khosla(現VC、かつてSun Microsystemsの創業に関わった4人のうちの1人)などから出されているという(註14)。

 さらに、超党派の取り組みとして議会に出された法案自体も、その内容に批判的な共和党議員が過半数を占める下院の通過は難しそう、という見方もある(註15)。

 1月の大統領就任式で、Roberto Blancoというヒスパニック系でゲイの詩人が詩の朗読を任されていたことなどからも、この2つの問題(不法移民関連と同性愛婚関連)が今後の大きな争点になりそうなことは半ば予想がついたが、そこにオバマが二期目には「これまで以上に本気でやる」と言った温暖化対策(=環境)問題まで絡んできた今回の話。IT業界内に限った(各社の)勝ち負けとは直接的にはあまり関係もないはずだが、そうした複雑な状況を「Mark Zuckerbergがどうクリアしていくか」という点では、とても興味深い話となりつつあるように思える。

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