本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの遠藤信博社長と、日本オラクルの遠藤隆雄社長の発言を紹介する。
「社会ソリューション事業を推進するため、常に市場と顧客を意識したスピード感のある組織体制に再編した」
(NEC 遠藤信博 代表取締役執行役員社長)
NECが4月26日に発表した2015年度(2016年3月期)を最終年度とする中期経営計画において、ICTによる社会インフラの高度化に向けた社会ソリューション事業に注力していくことを明らかにした。遠藤氏の冒頭の発言は、その説明の中で同事業を推進するための組織体制の再編に言及したものである。
NEC 代表取締役執行役員社長 遠藤信博氏
遠藤氏の説明によると、社会ソリューション事業とは、パブリック(防災、セキュリティ、電子行政、金融)、エンタープライズ(流通、物流、交通)、テレコムキャリア、スマートエネルギーといった4分野の社会インフラを対象としたもので、これらはNECが持つ技術力やソリューションを生かして大きく貢献できる分野だという。
この社会ソリューション事業を推進するために、同社は今年4月、組織体制も大きく再編した。従来はBU(ビジネスユニット)として、ITサービス、社会インフラ、エネルギー、キャリアネットワークを4本柱としていたが、これらを上記の4分野のBUに衣替えした。
一見、分かりにくい再編だが、それぞれの言葉が示すように、「従来はシーズ起点の個別最適な事業の集合体だったBUを顧客起点で最適化した」(遠藤氏)ところに最大の狙いがある。それを端的に表したのが冒頭の発言である。
さらに、新たな体制では4つのBUを支える横串型の組織として、システムプラットフォームBU、ビジネスイノベーション統括ユニットを設置。これらの組織を通じて、システムプラットフォームの共有化や開発コストの効率化、品質の安定化とともに、新たなビジネスモデルの創出も図っていくとしている。
今回の組織再編では、とくにシステムプラットフォームBUの役どころが注目される。同社の説明によると、あらかじめ特定の業種・業務向けに最適化したサーバやネットワーク機器、ソフトウェアなどを一括して提供することにより、短期間かつ低コストで導入できるシステムを提案していくとしている。
このアプローチは、個別注文に応じることを前提としていた従来のものづくりのプロセスを大きく変えるものとなる。メーカーとしてのプライドをかけた取り組みとも受け取れるが、一方で常に市場のニーズをとらえたものづくりができなければ、横串組織だけに土台から全体が揺らぎかねない。