独SAPが米フロリダ州オーランドで開催した「SAPPHIRE NOW 2013」の3日目となった5月16日、SAPの共同創業者でスーパーバイザリーボード会長を務めるHasso Plattner氏が登壇、高性能分析アプライアンスとしてスタートしたインメモリデータベース技術「HANA」の進化について語った。
「HANAはプラットフォームだ」とPlattner氏は述べ、あらゆる業務アプリケーションの基盤としてのHANAをアピールした。
41年前、ドイツでIBMに勤務していたPlattner氏は同僚4人とSAPを創業。約10年前にCEO職を退いた後も戦略や技術研究などの面でかかわってきた。HANAはその成果だ。業務アプリケーションの速度を改善し、創業時から目指してきた「リアルタイムビジネス」を実現できないか、大きなボトルネックとなっていたのはディスクI/Oだ。そこでシステムが包容するメモリ活用に目をつけ、CTOのVishal Sikka氏と本格的な開発に取り組んだ。
SAPの共同創業者でスーパーバイザリーボード会長を務めるHasso Plattner氏
HANAが「High-Performance Analytic Appliance」として正式に発表されたのは、2010年の「SAPPHIRE NOW」だ。あれから3年目、HANAは分析系、そして情報系の情報基盤に拡大し、データベースベンダーを脅かす存在になりつつある--すべて計画通りだ。
そして今、SAPのHANA戦略はプラットフォームに移っている。「4年間、HANAとは何かを説いてきた。ちょっとしたクライマックスを迎えたと感じる。もはやHANAが重要なのではない。HANAの上で動くアプリケーションが重要なのだ」とPlattner氏。そして、今年のSAPPHIREでは、多数のHANA対応アプリケーションが展示されていると胸を張る。
「HANAは、業務アプリケーションのプラットフォームになった」(Plattner氏)。
デザインシンキングの支援者でもあるPlattner氏のスピーチは、「顧客がSAP製品とプラットフォームから期待するものはなにか?」という自問から始まった。ビジネスを動かすシステム、さまざまな種類のアプリケーション、財務、製造、営業などを瞬時にモニタリングできるシステム、クラウドをはじめとしたアプリの統合、セキュリティ、プライバシー、災害復旧、高可用性、新しいチャレンジに適応できるシステム、拡張できるシステム、モバイルからすべてのアプリへアクセス……。
プラットフォームになるHANA。SQLとストアドプロシージャを利用するため、アプリは完全に書き直す必要がなく、むしろリファクタリングと簡素化のメリットを得られるという
もちろん、SAPはこれらをそろえていく。例えばアプリケーション。「これからは、すべてのアプリが電話、タブレット、PCで動かなければならない」とPlattner氏、SAPは会期中、HTML5ベースの最新のアプリセット「SAP Fiori」を発表している。コンシューマーレベルのユーザー体験を提供するというものだ。
このほか、コンシューマーレベルのユーザー体験、生産性を改善する効率の良いソリューション、モバイルユーザーの期待に応える速度などの特徴を挙げながら、「顧客はイノベーションへの道が保証されていることを求めている」、とPlattner氏はまとめる。