アプリケーション大手の同社は、HANAをベースにして速度を実現するだけでなくクラウドも変えつつある。SAPは5月初めにHANAベースのクラウド「HANA Enterprise Cloud」を発表したばかりだ。ERPなどを含む「SAP Business Suite」や「SAP NetWeaver Business Warehouse」を利用できるというプライベートクラウドサービスだ。
これまでクラウドで配信されるアプリケーションというと、ソーシャルメディア、検索、オフィスや業務アプリ、シンプルなERPなどの汎用的なものが主だったが、「これは過去のものになる」とPlattner氏。(HANA Enterprise Cloudにより)「ERP、CRM、リアルタイム分析、プランニング、リアルタイムBtoBネットワークなど、性能主導複雑な分析系アプリケーションも可能になった」という。SAPはここで、Bring Your Own Licenseモデルをとる。これについては、車を買うのか、リースするのかと同じ計算だと説明した。
これは選択肢の拡大も意味する。顧客は、1)最新のスイートを現在のインフラで動かす、2)HANAの上でオンプレミスで最新のスイートを動かす(x86ハードウェアが必要、メリットは大幅な性能アップ、「イノベーションへのレースが始まる」)、3)最新のスイートをHANA Enterprise Cloudで動かす(ハードウェア不要、最新のアプリを利用できる、SAPが常時システムをモニタリングし最適化する、TCO削減「あらゆる分野でのイノベーションを始められる」)の3つから選択できるという。
HANA Enterprise Cloudのもう1つのメッセージは、「弾力性のあるクラウド向けのデータベースとプラットフォーム」としてのHANAだ。HANAは5〜20倍の圧縮率によりDRAMとSSD(Solid State Driveの利用を大幅に削減、サイズや性能で妥協のない安価なシステム、高速なデータマイグレーション、エクスポート/インポート、超並列オペレーションなどのメリットが得られる。既存のクラウド事業者とインフラで大きく差別化を図る狙いだ。
Platter氏は話を進める中で、HANAにまつわる誤解についても説明した。「合衆国憲法で、言論の自由が認められている。だが、FUD(恐怖、不安、疑念)をでっち上げる自由があるとは規定していない」という独り言の後、HANAでは仮想化ができない(No、できる)、プロプライエタリハードウェアで動く(No、標準のx86ハードウェア)、マルチテナントに対応していない(No、「Business ByDesign」やSuccessFactors、Aribaはマルチテナントで、HANAはこれらの製品の土台となる)などの「誤解」を正していった。
Plattner氏が挙げた市場の「誤解」の1つに「HANAはSAPアプリしか動かない」がある。「HANAの利用の60%以上が非SAPアプリケーションだ」とPlattner氏。HANAの上で動くのはBusiness SuiteなどSAP製品だけではないし、典型的な業務アプリケーションだけでもない。SAPは2012年よりベンチャー企業向けのHANAプログラムを展開しており、参加企業は430社以上を数えるという。「これがSAPの将来だ」とPlattner氏。
教え子の成果を誇らしそうに紹介するPlattner氏からは教授としての横顔が伺えた。
Platter氏は最後に「HANAが可能にすることは何か? イノベーションだ」と答えた。これまで想像できなかったことに到達する、それを可能にするのがHANAという。そして、同社がドイツ・ポツダムに立ち上げたThe Hasso Plattner Instituteの学生を壇上に招き、自分たちが開発したHANAアプリのデモを披露させた。その1つであるバスケット解析ソフトでは40億レコードの実データを分析し、プロモーションでどの製品とどの製品を組み合わせるかのシュミレーションを瞬時に表示してみせた。
学生が開発したバスケット解析アプリケーション
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