IT専門調査会社IDC Japanは5月28日、ルータ、イーサネットスイッチ、企業向け無線LAN機器を含む国内ネットワーク機器市場の2012年の実績と予測を発表した。
これによると、2012年の国内ネットワーク機器市場は、企業のネットワークへの投資回復とモバイルトラフィックの増大を背景とする移動体通信事業者の活発な設備投資が市場をけん引し、2011年の実績を上回った。
個別に見ても、ルータ、イーサネットスイッチ、企業向け無線LAN機器のいずれの製品分野も2011年の実績から伸びている。特に、企業向け無線LAN機器市場とイーサネットスイッチ市場は、前年比成長率がそれぞれ41.4%増の208億7100万円、13.0%増の1786億6700万円と大幅なプラス成長を達成。ルータも0.6%増と小幅ながら伸び、1187億3700万円に達した。
また、通信事業者向け市場では、移動体通信事業者向けの売り上げが引き続き堅調で、市場のけん引役となった。ただし、移動体通信事業者向け市場において、イーサネットスイッチの需要は年間を通じて堅調だったものの、移動体通信事業者向けのルータの売上高は2012年後半にやや減速感が見られたという。
2012年の国内ネットワーク機器市場では、移動体通信事業者の需要をとらえたベンダーや、企業向け市場で大型案件を獲得したベンダーが好調だった。ルータ市場においては、シスコシステムズ、アルカテル・ルーセント、富士通、NECの好調さが際立ったという。
また、イーサネットスイッチ市場では、シスコシステムズ、富士通、日立電線の上位3社が大きく売り上げを拡大した。
今後のネットワーク機器市場は、通信事業者の投資や企業の更新需要動向によって増減するものの、市場規模は安定的とIDCは予測。2012~2017年の年間平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)は、ルータ市場が1.2%増、イーサネットスイッチ市場が1.2%減、企業向け無線LAN機器市場が1.0%増としている。
2012年は企業の投資回復によって企業向けネットワーク機器市場は好転したが、今後も企業は厳しいコスト意識の下でネットワーク機器を選定するとIDCでは分析する。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの草野賢一氏は、企業向けネットワーク機器ベンダーに向けて「企業のダウンサイジング志向に応えるため、現在の売れ筋のクラスよりも下位の製品ラインアップを、今後も継続的に強化しなければならない。下位クラス製品強化において重要なのは、顧客が期待する上位クラス製品と同等のネットワークや装置の信頼性への要求に、可能な限り応える製品や仕組みを作ることである」とコメントを寄せた。

国内ネットワーク機器市場